バレンタイン 6
(6) アキラの目に動揺が走った。それは俺のS因子を微妙に突いてくる。 「それは…。尚志さん、腕が痛いよ」 「誰か、付き合ってみたい人はいた?」 アキラが息を呑んだ。――たぶん、今の俺はいやな顔をしているのだろう。 「ねえ、俺は安心してていいの?」 アキラの手首が震えるのを、俺は楽しい思いで感じていた。 自動ドアががーっと開き、新しい客が入ってきた。 いらっしゃいませ!と声を掛け、おにぎりを並べていた小倉君がいそいそとレジに入る。