昼食編 6
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「え?、あ、ハイ、頑張りマス…」
反射的に応えながら、その笑いと言い方に何となく釈然としないものを感じ、頑張ってって、何を
頑張るんだろう、と首を捻るヒカルに、
「彼、待ってるわよ。早く出ないとまた怒っちゃう。」
と、外を見て、クスクス笑いながら言う。
見ると、アキラが店の外に立っている。もしかしたら先に棋院に向かってしまっているかもしれない、
と思ってたので、アキラが待ってくれてたことが嬉しかった。
へへっと店員に笑いかけてから、勢い良く店の外に飛び出た。
「塔矢、お待たせ。いこーぜ!」
ちらりと振り返ったアキラはまだムッとした顔のまま、ヒカルを待たずにすたすたと歩き始めた。
「あ、塔矢、」
ヒカルは慌ててアキラの後を追う。
すぐに追いついてアキラの横に並び、チラッとアキラの顔を窺う。
アキラは前を見たまま、ひたすら歩き続ける。
でも、知ってるんだ。今、オレが見たの、わかってるだろう?
知ってるんだぜ。気にしてないみたいにしたって、オレのこと、気にしてるんだって。
ずっと、そうやって待っててくれたんだよな、塔矢。
追いついたと思ったら、またすぐオレを置いて先に行っちゃうけど、オレが追っかけてくるの、
ホントは待ってるんだよな。
今日、オレはやっとおまえに追いついた。おまえを捕まえた。
勝負はまだまだ、これからだ。
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