sai包囲網・中一の夏編 6


(6)
 ふいに、教室の窓越しに拒絶されたときのことを思い出した。閉ざさ
れた窓とカーテン。こんな風に彼を追いつめるようなマネをしてしまう
のは、あのときの仕返しなんだろうか。
 イヤ、それよりも、ボクは彼の、進藤のことをもっと知りたい。最初
の圧倒的な強さと、その後の落胆したほどの棋力とのギャップ。謎めい
た進藤のすべてを。
 そのためには、どうすればいいか。答えは簡単だった。
「進藤」
「な、なんだよ」
「黒、初手、右上スミ小目。白、左上星。黒、右下星…」
 進んで行く手順に、呆気に取られていた段々と進藤の表情が変わる。
そうだよ、これはキミが一時間ほど前に打った一局の棋譜だ。最後まで
読み上げ、ボクは視線を進藤の戻した。
「次のも言おうか?今度はキミが白番だったね」
「も、もう言わなくていい!」
 ボクに見られていたとやっと気がついた進藤が、小さく項垂れて自分
の足先に視線を落とした。さすがに、真っ正面からボクと向き合う気力
がないらしい。
「そんで、お前は何を言いたいわけ?」
「あれがキミの本当の実力?」
「本当って…オレの実力ならお前が一番良く知ってるだろ。ふざけるな!
って、対局中にどなりやがったくせに」
 拗ねたような口調と共に、ふっくらとした頬が動く。
「じゃあ、saiは?」
「あれは、その…おまえと対戦してたら、オレも実力をつけたってこと
だよ!オレだって、毎日、練習してるんだからな。強くだってなるさ」
「saiのレベルは、そんなもんじゃない」



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