sai包囲網 6
(6)
「緒方さんのことは分かった」
「だったら・・・」
「僕も訊きたいことがあるんだけど」
「えっ?」
これで解放されると思ったのに、まだ何があるっていうんだ?ヒカル
の不満そうな表情に、アキラがふっと笑った。
「な、何だよ」
「ここでは何だから、うちに来ないか?」
「うちって、塔矢んち?」
当たり前だろと頷くアキラに、ヒカルは腰が引けて来る。
「でも、お前だって、塔矢先生の見舞いに来たんだろ?」
「お父さんのことなら心配しなくていいよ。今日、退院なんだ」
午前中の検査が終わってからだから、あと五時間くらいかかるけどね。
そう続けられる。
「いや、だけどさ・・・」
「これから見舞の客も増えるだろうから、こんなとこに子供が二人立っ
てたら、目立つだけだよ。僕はかまわないけどね」
困るのは君だよ。そう言われたような気がして、ヒカルは助けを求め
るように視線を斜め後ろに流した。今度は佐為もこちらを見ており、痛
ましそうな表情で口元を押さえている。
『佐為、どうしよう・・・』
『塔矢の、家には行かない方がいいと思います』
『だよな。でも、ここにいて、また緒方先生に見つかったら』
ちらりと視線を投げた先には、目立つ真っ赤なRX−7が陽光に輝い
てる。いつ用を済ませた緒方がここにやって来るか分からない。
さすがに二対一で問い詰められたら、ヒカルのついた嘘など理詰めで
看破されてしまうかも知れない。
「分かった。お前のうちに行くよ」
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