平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 6


(6)
ヒカルが、佐為の下で腰を動かし始めていた。
その動きが、佐為のいきり立ったモノをも擦り、刺激する。
漏れる喘ぎが徐々に大きくなっていく。佐為の望み通りに。
――ヒカルが、あまりに過ぎる快感を嫌っていることを、佐為はよく知っていた。
そういう時、事の最中でもヒカルは、体は悦楽に流されているのに突然心だけ
現実にかえってしまったような、ひどく冷めた哀しげな目つきで佐為を見返したり
する。どうやらそれは、あの座間に捕らえられていた時の出来事に起因すること
も佐為は感づいていたが、その理由を聞いた事はない――あの時の事を思い出す
必要はない。
ただ、愛しい人が自分の腕の中、自分の手管でどこまで乱れるものか、見てみたい、
そしてそれを試してみたいと思うのは、男の本能のようなものだろう。
明るい所で心ゆくまで、愛する者がよがり喘ぐ様を、見て、聞いてみたいのだ。
ヒカルの出来るだけ甘く、出来るだけ高い声を長く聞いていたくて、佐為は
組み敷いた少年の体をゆっくりと、より高い所へ追い上げる。
しかし、さしもの佐為も、ついにヒカルのよがる声の中に、しゃくり上げる声が
混じるにいたって、慌てた。
「ヒカル……ヒカル……」
佐為の呼びかけにも、ヒカルはただしゃくり上げながら、首を左右に振っている。
指を引き抜き指貫をおろして、佐為はヒカルの後ろに、自分のモノを押し当て、
貫いた。
ヒカルが泣きながら、しがみついてくる。
佐為は、自身を押し包むヒカルの熱さを味わいながら抽挿を開始したが、それでも、
焦らすことはやめなかった。
ヒカルは決定的な快感を欲して腰を動かしたが、肝心なところで佐為の方がそれを
わざと外してしまう。
「佐為…っ佐為…っあぁ、やぁ! なんで………っっ!」
ヒカルに自分の腕の中で思う存分、声を上げさせてみたいのだ。
高く上がる声を押さえようと、ヒカルが自身の指を噛んだ。
最中に何かを口に含み、声を止めようとするのは、互いの家で抱き合ううちに
できてしまったヒカルの癖だった。
しかし、それでは今日は意味がない。佐為はその指をそっと外し、両腕をまとめて
自分の胸に抱きしめた。



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