誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 6
(6)
塔矢元名人の経営する碁会所。そこには沢山の人が集まっていた。
市河もいる、緒方も芦原もいる、広瀬や北島など常連客の姿もあり、おまけに塔矢元名人までいた。
いつもと違ったのは、その格好…全員同じ衣装を身に付けていることだった。
シンプルな白いワンピースに身を包み、背中には白い羽、頭にはエンジェルハイロゥを乗せていた。
正しくそれは天使。男…じじいどもの天使軍団であった。
そして碁会所の内装は花とリボンとプレゼントに装飾されている。そう、碁会所は天国と化していた…。
自らも同じ装束に着替えながら、アキラはてきぱきと指示を出す。
「広瀬さん、ピアノの準備はできてますか?本番はトチらないで下さいね。北島さんは指揮棒を忘れないで!あ、市河さん、ケーキは後でいいですから。アッ、ちょっと!花はこちらに…」
張りきるアキラをにこやかに見つめる芦原と、そして対照的に絶望的な表情の緒方がいた。
「ハハハ、アキラったら進藤君の誕生日パーティーだから頑張っちゃって。楽しそうだなあ」
「…ほ、本気なのか、アキラ君…?」
泣き出しそうな緒方の声も、一心不乱に会場設営をするアキラには届かない。
「天使のバースディソングに目覚めると、そこは天国…花に囲まれプレゼントやケーキの山…そしてボク!感動して涙で視界が滲む進藤の目元に優しくキスをしてあげよう…フフフフフ」
アキラは完全にトランスしているようだ。
「老人とオカッパの天使なんて寝起きに見せられたら、進藤じゃなくても泣き出すだろうな…」
遠い目をし始めた緒方の呟きは、今回ソロパートを担当する塔矢元名人のジャイアン顔負けの
発声練習にかき消されていったのだった。
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