恋 Part 4 6


(6)
最初に覚えた違和感はキスだった。
体を繋げるようになってから、進籐はキスを拒むようになった。
今までのように、棋院の階段の陰や二人きりのエレベーターで、そっと抱き寄せ顔を寄せると、進籐は鼻先で逃げるようになった。
それで言うんだ、苦笑まじりに。
「我慢できなくなるからさ」
初めこそ、その言葉にどきどきしたけれど、その内僕のほうが寂しくなってしまった。
セックスは、素晴らしい快感をくれるけれど、キスだってそれに負けない陶酔をくれると、僕は思うんだ。
むしろ、射精で区切りがついてしまう快感とは違い、キスは……幸せな時間をくれる。
それは勿論僕だって、進籐の中で爆ぜる刹那に、震えるような喜びを味わうけれど、キスはそれとはまた別の……そう、感情の交歓とでも言えばいいのだろうか。
間違いなく魅力的な行為だと思う。恋人たちにとってね。
でも進籐は、キスをねだらなくなった。
僕が、無理矢理唇を奪えば、仕方なくといった感じで応えてくれるけれど、楽しんでいないことは自然伝わってくる。
それは以前の進籐とは余りに掛け離れていて、僕はやはり戸惑った。
だけど、それは深刻なものではなかった。
単に僕が寂しいなと思う程度のことで……。

次に覚えた違和感は、ごく最近のことだ。
いま直面している問題だ。
僕は、僕たちの行為が、彼に負担を強いていることを知っている。
だから、少しでもその負担を軽くしてやりたいと負っている。なのに、彼はそのための行為を拒むんだ。
キスから始まる愛撫を、嫌がるんだ。
いまだってそうだ。
シャワーを使った後、後ろにローションを塗り込んできたと臆面もなく言うと、抱きしめようとする僕の腕をするりとかわし、僕を軽く押し倒し、太股の上にまたがってきた。
そして、解そうと伸ばした僕の指を抑えつけ、自分から挿入してきたんだ。



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