温泉旅情 6


(6)
では、ヒカルは、旅行に行く相手に、なぜ自分を選んだのだろう。
旧知の仲でも、あけすけに気を許せる間柄でもない。一緒にはしゃげるわけでも、同じ話題で盛り上がれる
わけでもない。
俺くらいの年齢の、適当な人材が思い浮かばなかったとしても、温泉に一緒に行くだけなら、もっと相応な
相手をいくらでも見繕えるだろう。
彼の周りにはいつも人が絶えない。
なのに、彼は「緒方さんと行きたい」と言った。照れながら、珍しく切実な顔をして。
選ばれたことを、光栄に思わなければいけないのかもしれない。誘われたことを素直に喜ぶべき
なのかもしれない。
ただ、彼が自分を誘った理由に思い当たるものがひとつだけあって、けれど、それは決して
嬉しいものではなかった。
考えても仕方のないことだとわかってはいるのに、そのことがずっと胸の奥に引っかかっている。

溜息を吐いて、思考を打ち切る。
意識を現実に戻せば、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。
ヒカルはとうとう眠ってしまったらしい。
横目で、彼の目が瞑られているのを認して、カーステレオから流れるBGMを止めた。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル