しじま 6


(6)
進藤は冷蔵庫のなかから卵とソーセージを取り出した。
あまり手際良くとは言えないけど、それで焼き飯を作ってくれた。
ボクは進藤の後ろ姿を見ながら、そのうなじに吸い付きたいと思っていた。
もちろん料理中の彼にそんなことをするほど、ボクはなりふりかまわないヤツじゃない。
「できた。お皿を二枚出してよ。あとスプーンも」
いい匂いで、しかもボクが作ったものよりもはるかにおいしそうだった。
「きみは料理ができるのか」
「これくらいなら学校の調理実習とかでやっただろ」
ボクの記憶にあるかぎり、一度もこんなものを作ったことはない。
そうだ、家庭科のある曜日は手合いと重なっていたんだ。
二人でもくもくと食事をとる。あの水っぽいご飯も、焼き飯にしたらけっこういけた。
「どう、塔矢?」
「おいしいよ」
そう言うと進藤は照れくさそうに笑った。
「このツケモノ、うまいな」
進藤は小気味良い音をたてて漬物をかじっている。その様子がなんだかかわいい。
「ごちそうさま」
両手を合わせてそう言うと、もう食べ終わっていた進藤がボクに近付いてきた。
進藤の瞳の色に、全身がかたくなる。
「塔矢……」
そのささやきはとても甘く感じられた。
だけどなぜか、ボクはそれを聞いていられなかった。
「お風呂を入れてくるよ」
頬に触れてきそうな進藤の手から逃れるように、ボクは立ち上がった。
進藤を残して部屋を出る。
今日のボクは、変だ。
いつもなら、もう自分を制御できないで、有無を言わさず押し倒しているはずなのに。
情けないけど、ボクはそういう男なんだ。
それなのに、どうしてかそんな気分にはなれない。
こんな状態で、ボクは大丈夫なんだろうか。



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