失楽園 6


(6)
「やっぱすげぇ強いや、緒方先生」
ヒカルはポテトを咀嚼しながら緒方を絶賛した。緒方は流石に強い。間髪入れずに打ち出される
一手一手は、まるでそこに置くことが昔から決まっていたかのように迷いが無く、そして正しい。
手のひらで遊ばせて貰っているような不思議な感覚をヒカルは夢中になって追いかけた。
「オレを誰だと思ってるんだ。それにしても、こんなところで良かったのか? オレとしては、もっと
いいところに連れて行くはずだったんだがな」
緒方は肩を竦めて周囲を見回した。学生たちが多いハンバーガーショップで、白いスーツに身を
固めた緒方はいろんな意味で浮いていた。しかし、緒方にはまるで気にした様子がない。
「いいんだ。この間新しいのが出てさ〜、オレ、まだ食ってなかったんだもん」
「まぁ、オマエが満足してるんだったら別にいいが」
緒方は苦笑して手元のハンバーガーの紙を破いた。きちんと袋は一方が開いている作りになっている
のに、緒方のそれはおかしなところから姿を覗かせている。その手つきに、緒方がファストフードを
食べなれていないらしいことが判った。
「こんなのでホントに腹が膨れるのか?」
「大丈夫だよ、帰ったら飯食うし」
ヒカルはコーラを一口飲んで口の中に残っていたポテトの味を消すと、ハンバーガーに手を伸ばした。
「先生、これさ、ここから簡単に開くの。知らなかった?」
ヒカルがニヤリと笑って包み紙からチーズバーガーを取り出して見せると、緒方の目が僅かに見開か
れた。そして明らかに気分を害したように眉根を寄せる。
「……………仕方ないだろう」
「ハハハ、先生って全然こんなとこに入ったりしないんだな。……ね、塔矢とも入らないの?」
幾分躊躇って、ヒカルはその名前を口にした。
2人の間に和やかに流れていた空気がピシリと凍った。



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