初めての体験+Aside 6


(6)
 「ここだよ。」
ヒカルの案内で着いた先は、立派な日本家屋だった。社は身震いした。自分はとんでもないことを
しようとしているのではないだろうか?自分から猛獣の檻の中へ飛び込むような真似を
している。ここはアウェイ…敵の本拠地である。ここに足を踏み入れたら、二度と引き
返すことは出来ないだろう…。
――――ここを出るときは、オレはもう今のオレとちゃうかもしれへん…
 さっきまでは天国だった。ヒカルと二人きりで、ちょっぴりデート気分も味わえた。
今は、門の向こうに脱衣婆が待ちかまえていても驚かない。
「どうしたんだよ?」
ヒカルが社の顔を不思議そうに覗き込んできた。
「あ…や…でかい家やなぁと思て…」
「な?でかいよな?まあ、とにかく入ろうぜ。」
そう言いながら、ヒカルはキュッと社の手を握って促した。
『ああ!手が、進藤の手が…』
小さくて柔らかいその手が、自分を人外魔境へと導いた。



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