トーヤアキラの一日 6 - 7
(6)
いつもの父親の場所に座っているアキラは、いつものアキラの場所で胡座をかいて食事をして
いるヒカルを見詰める。最初は嬉しそうに見ていたアキラだったが、その瞳は徐々に鋭さを
増して行き、獲物を狙う獣の目に変っていた。
ヒカルがパンをかじって顎を動かして噛み砕く。それを、ミルクをたっぷり入れたコーヒー
で飲み込む。その時に動く喉仏を見た時、我慢できなくなったアキラは、突然右手でヒカルの
左手の手首を掴み、引き寄せながら、腰を浮かして右膝を移動させてヒカルの横に素早く動く。
驚いてアキラを見上げるヒカルを押し倒して上にのしかかった。
「なっ!何だよ!」
倒されたヒカルは非難するようにアキラを見ながら抵抗する。
ヒカルの右手首も左手で掴み取って、アキラはヒカルの喉に思い切り吸い付いた。
「や、やめろよ!!」
そうヒカルが叫ぶと、アキラの唇に触れている喉仏が動く。
「進藤、君が好きだ・・・・しんど・・・」
そう切羽詰った声で囁きながら、首筋から顎を掠めてヒカルの唇を捕らえる。
最初は驚いて抵抗する様子を見せたヒカルだったが、アキラの欲している物がキスだと分かると
力を抜いて自分から唇を開いてアキラを受け入れた。
ミルクコーヒーの味がする口腔内を思い切り弄る。ヒカルの舌を吸い上げ味わう。
クチュ、という音が静かな部屋に響き渡る。その音を聞きながらさらに気持ちは昂ぶって行く。
最初はいつもと同じように口腔内を貪っていたアキラだったが、左手をヒカルの右手首から
頭に持っていくと動かないようにしっかり押さえつけた。
次の瞬間、口を大きく開けてヒカルの口を覆い、出来るだけヒカルの奥深くに舌を伸ばす。
「う・・ぅ・・」
苦しそうに呻きながら、頭を動かそうとするヒカルだったが、アキラに押えつけられていて
動く事が出来ない。アキラの舌を押し戻そうともするが、上からの圧力の方が強くてうまく
舌が動かせない。
(7)
アキラは夢中でヒカルの喉の奥に舌を伸ばそうとしている。ヒカルはあまりの苦しさに右手で
アキラの背中を思い切り叩いた。
それでもアキラはやめる様子を見せない。鼻で息を継ごうとするが、上から思い切り圧迫されて
うまく行かない。本当に息が出来なくて苦しくなったヒカルは、右手でアキラの肩を掴むと足も
使って、思い切り体ごと突き飛ばした。
華奢に見えるヒカルだが、元々はスポーツが得意な元気少年である。アキラの方が多少背が高い
とは言え、本気で力を出せば、アキラに負けるわけは無いのである。
「バカッ!!」
起き上がったヒカルは、掠れた声でそう叫ぶと、胸に手を当てて激しく息を吸い込む。
突き飛ばされて後ろに尻餅をついたアキラもまた、はぁはぁと息をしながら呆然としている。
やっと酸素を補給したヒカルが、アキラを睨みつけながら大声を上げる。
「殺す気かよ!!お前っ!!息出来ねぇだろ!!」
そのヒカルの声でやっと我に返ったアキラは、情けない顔で呟く
「ご、ごめん・・・・・ボクは・・・ただ・・」
「ただ、なんだよッ!!何するつもりだったんだよ!!」
「ただ・・・キミの喉の奥に触れたくて・・・」
「えっ??何だよそれ、ふざけんなよ!!」
「ごめん・・・・・・」
ヒカルの強い口調に、アキラは泣きそうな顔になって自分のした事の言い訳をする。
「・・・キミの食べてる姿が可愛くて・・・でも、喉仏がイヤらしく動くから、つい触れてみたくて・・・・・
キミを苦しめるつもりなんて無かったんだ。ゴメン。本当にごめん」
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