pocket-sized Xmas 6 - 7
(6)
今朝目が覚めたアキラたんが、ちょっとがっかりした顔をしたのには訳がある。
昨夜アキラたんは何年ぶりかで、サンタさんにお願いをして寝たのだ。
「ボクに、ちゃんとした大きな体をください」と。
サンタさんに「プレゼント」を入れてもらうために、
アキラたんは予め俺の靴下を引っ張り出してその中に入って寝た。
「あ、でもボクが急に大きくなったら、英治さんの靴下破いちゃうかも・・・」
「そんなの全然構わないよ!今年は俺も、アキラたんと同じお願い事して寝るからね」
「ありがとうございます。子供っぽいとは思うんですけど、でももしかしたらって・・・
あの、もし万が一これで元の大きさに戻れたら、アルバイトでもして新しい靴下を
お返ししますね。今までの生活費も」
「何言ってるんだよ、そんなの気にするなよ!サンタさん、来てくれるといいね」
「はいっ」
昨夜は、そんな会話を交わして眠りについたのだった。
まだサンタさんを信じていたというわけではないんですけど――と何度も断りながら、
でもなんとなくそわそわしていたアキラたん。
俺もこの年になってサンタを信じてるわけはないが、それでももしかしたらと思っていた。
アキラたんは原因不明で小さくなったのだ。
だったら、原因不明の奇跡が起こって元に戻れたっておかしくないじゃないか。
聖なる夜に。
魔法が解けるみたいに。
――そしたら力いっぱい抱きしめよう。
今まで出来なかった分まで強く強く。ありったけの思いを込めて。
(7)
でも、アキラたんは大きくならなかった。
落胆してるだろうにアキラたんはぴょこんと跳ね起きて、微笑んでみせた。
「英治さんの靴下、破かないで済んだみたいです。
ボクのわがままで貸していただいて、ありがとうございました」
「いいよ。靴下一枚で寒くなかった?」
「とっても暖かかったです。下に色々、していただいてましたから・・・」
アキラたんが寒くないように湯たんぽの上にタオルを巻いて、
その上でアキラたんは寝たのだ。
「そっか。それじゃアキラたん、ゴハンにすっか!デザートに昨夜のケーキ食べよ」
「はいっ!」
いつもどおりアキラたんを胸ポケットに入れて台所に向かう。
心臓の上から俺を温める小さな温もり。
アキラたんがちさーいままだったのは可哀相だけど、
夢の中みたいにアキラたんがいなくなったわけじゃなくて本当によかった。
そら夢の中の普通サイズのアキラたんも魅力的だったけど、
一年で一番セクース人口が多いというイブの夜だって何もしないし出来ない俺たちだけど、
それでもやっぱり俺にはこの子が一番だし。
半熟卵の上に塩を振って、湯気の立つ麦茶の上に砂糖を落とす。
赤味がかった液体の中で砂糖の粒子が跳ね上がっては溶けていく様子を、
テーブルの上に降りたアキラたんがマグカップの縁に手をかけてしげしげと眺めている。
「じゃあ、食べようか」
「はいっ。いただきます!」
朝食が済んでケーキを食べたら、内緒で用意したプレゼントをアキラたんに渡そう。
そうして俺にとっては、
小さくても大きくてもいい。
優しい君と今日も一緒にいられることが、何よりのクリスマスプレゼント。
<終>
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