墨絵物語 6 - 7
(6)
ヒカルを悦ばせている大筆はそのままに、男は別の筆を取り出し
朱墨の入った容器にそれをどっぷりと浸し、しばらく放置した。
その間も大筆の動きを休めることなく、
押したり引いたり、斜めに衝いたりとなかなかに忙しない。
数分後、男は容器から筆を取り出すと、ヒカルの後ろから大筆を抜き、
その代わりに下半身に満遍なく朱墨を塗り付けた。
「!!!」
急に冷たい刺激を受け、暴発寸前のペニスがひくひくと攣るような
動きを見せる。ぴゅぴゅっと二、三度精が弾け飛んだ。
(いまか!)
男は空いた手で下敷きと文鎮と金で縁取られた黒の高級紙を取り寄せると、
いつものようにセットし、続いてヒカルの腕と柱を繋ぐ紐をナイフで切断した。
支えを失い畳に落ちた背中を男はすぐさま抱きかかえると、
用意した紙の上に跨がせ、猛り狂うヒカルのモノを強引に手で押し付けた。
「ンン──ッ!」
強力な刺激に全身を総毛だたせながらヒカルは達した。
紙の上だけでなく、畳の上にも白い液が飛び散っている。
その激しい迸りこそ若さの特権。肩で荒い息を繰り返すヒカルの髪を、
男は顔をほころばせながら指で優しく撫でつけた。
「よく頑張ったね…おかげでいい『作品』が出来たよ」
完成した作品の上に半紙をかぶせ、余分な墨を取る為、一度文鎮で軽く押さえる。
それを机の上に置くと、男はネクタイを緩めながらヒカルに囁いた。
(7)
「本当なら『モデル』に手は出さないんだが…キミは可愛いから特別だ」
両腕を縛っているタオルはそのまま、猿轡のみ取り外し、
男はヒカルを横抱きにする。
「い、やぁッ!」
ごろんとされるがまま転がる若くてみずみずしい肢体へ、
男は立派に勃ち上がった自分の半身をあてがい一気に押し進めた。
筆とは違う確かな感触に、ヒカルの内部が素直に反応し、同調する。
「はあ、んッ…ンン、」
「──気持ちイイかい?」
「イ、イ…もっと…ツヨクし、…て」
熱いものに擦られ、固いものに抉られる快感にヒカルの腰はとろけそうだ。
「じゃあ遠慮なくいくよ」
「…あああッ!!」
先ほどの倍のスピードで突き上げられ、ガクガクと身体が揺さぶられる。
それでも快感は底なしとばかりに身体中を支配し、ヒカルを何遍も喘がせる。
その声に煽られて、男の動きが益々激しくなる。
「クッ、」
「ひゃあッ!」
男が中に放ったと同時に、ヒカルも再度イッてしまった。
「今夜の事は誰にも話してはいけないよ…。キミも気持ちよかったんだろう?」
帰りしなそう言われ、ヒカルは顔を真っ赤にしながら逃げるように走り去った。
あっという間に消えた後ろ姿に男は楽しげな笑い声を上げると、
作品の出来栄えを確かめようとアトリエへ踵を返す。
黒地に聳え立つ朱色の砲身、そこから飛び出した白濁物が描く軌跡まで
的確に表現されている。
(今夜も傑作が誕生した…ありがとう、進藤君)
男の名は芹澤──囲碁のプロ棋士であると同時に、
美少年の局部を拓本にする趣味を持つ男。
“チン拓の芹澤”──そんな彼の素顔が明かされる日はやってくるのだろうか?
そして、何事もなかったかのように男は今日も墨を磨っている。
<終>
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