スノウ・ライト 4 - 6
(6)
ヒカル姫の入った小屋は、実は森の小人たちが住む家でした。
ベッドが七つあります。ヒカル姫は疲れていたので、その一つに横たわりました。
そしてスヤスヤと眠ってしまいました。
さて、仕事を終えた小人たちは帰ってきて、大変驚きました。
たいそう美しい少年がしどけなく眠っていたからです。
七人の小人たちの名は、ワヤ、オチ、フク、イイジマ、ホンダ、コミヤ、アダチです。
最後の二人は名前のみの数あわせなので無視してください。さばききれませんから。
「おい、誰だよコイツ。可愛いじゃん」
頬を赤らめたワヤはオチに問いかけました。オチはまったく冷静そうに首を振ります。
けれどその指は無意識に自分の股間をトントンと叩いています。
「知らないよ。ワヤ起こしてみたら」
「ボクが起こすよ〜」
ぷっくりと太ったフクがヒカル姫に近付きます。それをホンダがとめました。
「ここはおれが起こす。みんなは出て行ってくれ」
そう言いながらベルトをカチャカチャと外し始めました。
「あ! ズルイぞ! 俺だって!」
ワヤが割り込みます。いっせいに七人の小人たちが騒ぎ始めました。
「うるさいなァ!」
ヒカル姫は目を覚ましてしまいました。
みなはいっせいに息をのみました。眠っているときも心を奪われましたが、起き上がって
自分たちを見つめてくる瞳には誰をも魅了する輝きがあったからです。
(7)
かくかくしかじか、事情を説明しますと、小人たちは快くヒカル姫を迎えました。
ヒカル姫はすぐになじんでいきました。
ワヤはちょっぴり怒りん坊ですが、面倒見のよい小人です。
オチはお金をたくさん持っています。実は隣国の王子とちょっとしたつきあいがあると
囁かれていますが真相は分からず、そのキノコ頭は謎に満ちています。
フクは食いしん坊で、のんびり屋です。
イイジマはよく眠り、寝起きは不機嫌です。たまに「ばっかじゃねーのっ」と切れますが、
たいして怖くないので誰も気にしません。
ホンダは見かけは強そうですが、実は泣き虫です。
コミヤ、アダチは除外します。
小人たちはヒカル姫のその愛らしさにやられていましたが、暗黙の協定をつくり、誰も
抜け駆けをしないようにしました。しかしみなは虎視眈々と機会をうかがっていました。
さてヒカル姫は家の留守番を任されました。しかし寂しくはありませんでした。
なぜなら頻繁に小人たちが帰ってきてくれるからです。今日はフクが一番に来ました。
「わあ! ショートケーキだ!」
「うん、一緒に食べようと思ったんだ〜」
フクのくれるケーキをヒカル姫はとてもおいしそうに食べます。
「このイチゴ美味しいなあ」
「じゃあボクのもあげるよ」
ぽんとヒカル姫の口の中にイチゴが投げ込まれました。
「悪いな」
「ううん、ボクはこっちのイチゴをもらうから」
そう言うとフクはヒカル姫の胸紐をほどき、その薄いピンク色の乳首に触れました。
「え? 何するんだよ! ぅんっ」
ぱくりとくわえられ、ヒカル姫は思わず喘いでしまいます。
「ヒカル姫のイチゴ、とてもおいしいよ〜」
フクが舌先で転がすと、ヒカル姫の乳首は赤く色づいてきました。
唾液で艶やかに光るそれは、まさしくイチゴです。
(8)
フクはすっかりいい気になって、またその食い意地からヒカル姫の下の果実をも食べよう
ともくろみます。ドレスの中へとその丸みを帯びた手を入れました。
「や、だ……フク……」
ヒカル姫は涙目で訴えますが、それがさらにフクの情欲を煽ります。
万事休す! と思いきや、バタン! とドアが開いてホンダが入ってきました。
そしてフクを抱えるとそのまま窓の外へ放ってしまいました。
「よしっ! よしっ! 四人目だ! ヒカル姫を手に入れられる可能性はある!」
そう叫ぶとちらりとヒカル姫を見て、ゆっくりと近付いてきました。
ヒカル姫、身の危険を感じて壁際へと擦り寄りました。しかし逃げ場がありません。
ホンダの手が伸びてきます。ところが、またもやバタン!
今度は異臭を放つオチが入ってきました。
「オ、オチ! トイレにこもらせたのに……」
「ホンダさん、必死だな。はん! そもそもヒカル姫を意識しすぎなんだよ」
などと言いながら、オチの視線はヒカル姫から離れません。
アダチ、イイジマが這いつくばりながら入ってきました。ホンダにやられたのです。
一言も発せず、気絶してしまいました。
ホンダとオチはヒカル姫を挟んでにらみ合っています。
おどおどとその様子を見ていたヒカル姫でしたが、勇を決して言いました。
「オ、オレはそばかすのたらこ唇も、便所臭い細目もイヤだ!」
ヒカル姫、実は面食いです。二人はショックを受けた顔をしました。
そして一瞬後、ホンダの目から滂沱たる涙が!
「……うっ、うぅう〜」
ホンダの泣き声です。この世のものとは思われません。その泣き顔はお世辞にもかわいい
とは言えないものです。口元を押さえて出て行ってしまいました。
オチの目からも滝のような涙が流れています。
「ボクは金持ちだ。オバタ医院で整形手術を頼んでもらう!」
オバタ医院はその筋では有名な美容整形の病院です。
某狩人や隣国の王子の御付きもそこに通ったと言われています。
「ボクのうしろにはトウヤ国の王子がいる! この次は負けない! この次は!」
言いながらトイレに入ってしまいました。中からはハァハァという荒い息遣いと、どこか
をトントンと叩いている音が聞こえてきました。
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