初めての体験 6 - 8
(6)
トイレに入るなり、ヒカルは和谷を強引に個室に連れ込んだ。
「な、な、な、何すんだよ!進藤。」
和谷は、ひっくり返った声で怒鳴った。そんな和谷にヒカルは嫣然と微笑んで見せた。
そして、和谷の体を壁に押しつけながら言った。
「和谷・・・ホントはわかってんだろ?」
上目遣いに和谷を見る、その瞳の妖しさに股間がゾクリと疼いた。和谷は、
自分の中にわき上がった衝動に狼狽えた。
ヒカルが和谷のジーパンのファスナーに手を伸ばした。
「し・・・進藤・・・」
和谷は苦しげにあえいだが、ヒカルを止めようとしなかった。
「この間はしてもらったからな。今日はオレがしてあげるよ・・・」
ヒカルの手が和谷をやんわりと掴んだ。片手を添えるようにして、
緩急自在に手を動かす。その手の動きに反応して、和谷がゆっくりと
立ち上がり始める。
「う・・・あぁ!」
ヒカルの手淫に和谷は懸命に耐えた。眉間にしわを寄せ、顔をしかめている。
「和谷・・・我慢しないで。素直にオレを感じて・・・」
和谷の耳元でヒカルが囁いた。和谷の血液が一気に股間に集中した。
ヒカルは口元に笑みを浮かべると、和谷の前に跪いた。
「進藤・・・」
ぼうっとした顔でヒカルを見た。ヒカルの唇が和谷に触れた。
「!!進藤・・・!」
体中に電流が走った。ヒカルが舌先で和谷の先端をちろちろとなめた。
一旦、口の中に先端を納め、舌で愛撫した。唇を移動させ、下から上へ舐めあげる。
ヒカルの舌の感触に和谷自身がますます堅くなる。
手でするのとは違う温かくて、滑らかな口腔内の感触が、和谷を追い立てた。
「ああ・・・進藤・・・うぅっ・・・気持ちいい・・・」
ヒカルが和谷に軽く歯を立てた。ヒカルの口の中で和谷はまた大きくなった。
ヒカルが和谷を深く呑み込んだ。和谷の腰を掴んで、頭を前後に激しく移動させた。その動きにたまらず、和谷が進藤の頭を掴んだ。
「ああ!!進藤!で・・・でる・・・!」
(7)
ヒカルは和谷が放ったものをその口で全部受け止めた。ヒカルの口から
出された和谷のものは、糸を引いていた。ヒカルは、それを奇麗に舌で舐めとった。
和谷は全身から力が抜け、一人で立ってはいられなかった。
ヒカルは和谷の身支度を整えてやって言った。
「どうだった?結構うまいだろ?オレ。」
和谷に笑いかけるヒカルの姿には、いつもの無邪気さはなく、壮絶な色香を
放っていた。
そんな、ヒカルの様子に和谷の体がまた、疼き始めた。ヒカルは和谷の股間を
軽く揉むと
「元気だな。でも続きはまた今度にしようぜ。用があるんだろ?」
そう囁いて出ていった。和谷はずるずるとへたりこんだ。
ヒカルがクスクスと楽しそうにシステム手帳をめくっていた。
アキラは後ろから覗き込んで聞いた。
「それ何?進藤。」
「これ?今までの対戦相手の感想?見る?」
と、アキラに手帳を渡して言った。
「?四人しか名前が書いてないよ?」
アキラは不思議そうに訊ねる。
ヒカルの手帳にはこう書かれていた。
緒方・・・技量、力量文句無し。さすがタイトルホルダー。
塔矢・・・一見技巧派。しかし以外と力任せに強引に攻める傾向あり。
和谷・・・とにかく力で押すタイプ。がんがん攻める積極派。
伊角・・・押しは弱いが、冷静に進めるタイプ。その場の状況次第か。
「印象的だった相手だけだから。オレ、強い奴しか興味ないしね。」
と、ヒカルは無邪気な笑顔で答えた。
「ふーん?それより進藤・・・」
アキラがヒカルを寝室の方へと招いた。
<終>
(8)
ヒカルは一日の締めくくりに日記を書いた。日記と言っても、システム手帳に
その日の出来事を簡潔に書くだけだ。誰と会ったとか、どこへ行ったとか
そういうたわいもない物を日付の下に簡単に書き記す。
特別なことがあった時は、別のページに感想を入れておく。その感想も
シンプルだ。
ヒカルは棋院に行ったとき、ちょうど棋院から出てくる桑原に会った。
桑原は本因坊で、ぺーぺーのヒカルにとっては雲の上のような存在の老人だ。
その老人に向かってヒカルは軽く会釈した。
桑原は通り過ぎようとして足を止めた。そして、目を細めて、何か思案するように
ヒカルを上から下まで眺めた。
ヒカルは、じろじろ見られて、居心地が悪かった。もう一度深くお辞儀を
してその場から去ろうとしたとき、桑原が話しかけてきた。
「小僧、お前今から暇か?飯でも食いにいかんか?」
思いがけない言葉だった。ヒカルは躊躇した。どうして、本因坊と呼ばれる
この老人が自分などを誘うのだろう。
「すみません。囲碁ジャーナルの天野さんに呼ばれていて。」
「彼にはわしから言っとくよ。それならいいじゃろ?」
老人の言葉はヒカルに有無を言わさなかった。ヒカルはこの小さな老人の威圧感に
圧倒されて、黙って後をついていった。
|