クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 60


(60)
案内された庵の主は吉川上人その人だった。
「まあ、座り。何もあらへんとこやけどな」
先刻の天から降ってくるような轟声からは想像もつかない
目尻の垂れた優しそうな風貌と福々しい微笑みに、光はホッと安堵した。
草葺きの庵は粗末ではあるが隅々まできちんと掃き清められ、
書物や薬籠の類や僅かな什器が整頓されて置かれている。
ごたごたと物の散らかった己が住まいに比べ、俗世を離れて修行に励む上人の
清廉な暮らし振りが窺えるようだった。
――そう云えば、賀茂の邸もこんな風にいつもきちっと片付いてたな。
物がないわけではないのに主に似てどこかそっけなく、つんと澄ましているようなあの邸。
あそこで今頃、明はどうしているのだろうか。
緒方がついているから心配はないと思うが、きちんと食事は摂ったのか。
体内の妖しにまた苦しんではいないか――
「・・・で、ここ来た理由言うんは?」
「あ、はいっ。実は・・・!」
明が見たら驚くような真面目な顔をして、光は居住まいを正した。

「うんうん、なるほど。友達のために、わざわざここまでなぁ」
福々しい微笑みで吉川上人は頷いた。
横から社が二人に湯を勧める。
そう言えば評判の「シロ」の姿をまだ見ていないが、
庵の外に繋がれていたのを見落としでもしたのだろうか。
「オレと一緒に来て、賀茂を助けてください。お願いしますっ!」
胡坐を掻いたまま、床に額がつきそうなほど深く頭を下げた。



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