平安幻想異聞録-異聞- 60


(60)
ヒカルが部屋に戻るとアキラが何やら、あちこちに札を貼り付けては九字を切り、
小さく口の中で呪言のようなものを唱えている。
「何してんだよ」
「結界の補強だよ。普段からこの家には、かなり強い結界が張ってはあるんだけどね。
 念には念を入れだ。寝所のまわりにもと思って」
「ふうん」
作業をするアキラをヒカルは興味深そうに見つめる。
「今夜も来ると思う?」
「たぶんね」
聞いただけで、ヒカルの背筋を悪寒が走った。昨晩、自分の身体に絡まった、
ベッタリとした肉の感触。中にまで入り込んできた、異形の蛇のやけに
ひんやりとした……
「顔色、悪いけど大丈夫?」
「平気だよっ」
「確かに。それだけ、強がれれば大丈夫だ。なにしろ相手は妖力を蓄えたムカデ
 だからね、心してかからないと」
「ムカデかー」
「そう、歳20年を数えるオオムカデだよ」
「20年………」
アキラの目は真剣だ。どう答えていいかわからずに、ヒカルはバカな事を言った。
「オレより年上なんだな、そのムカデ」
「……………」
重い沈黙が落ちた。アキラがボソリと口を開く。
「冗談だったんだが」
だいたい、ムカデの年齢なんかわかる訳ないだろう、と。
「あ、あのなーーーーっっ」
「うん、そうしてる方が、君らしいな」
そう言って、アキラは照れたように、また作業に戻ってしまった。
もしかして、こいつ、オレのこと元気づけようとしてくれてるのかな、とヒカルは思う。
ひどく不器用なやり方ではあるけれど。
(そういえば、あの妖怪退治の時も、その後も、オレ達が会うときって、いつも
 そばに他の誰かがいて、二人っきりってのはなかったよな)
小さなころから陰陽師として教育を施され、家族らしい家族は使役する式神だけ
だったらしい。
そのことで昔、アキラとはケンカになって、囲碁での勝負までしたことがあった。
そして、それがきっかけで、少しはお互いのことを知るようにはなったけど。
そんなことをつらつらと考えながらヒカルはアキラの動きを眺めていた。



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