失着点・展界編 60


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飛行機は予定通りに到着し、アキラはベルトの上を流れる自分の荷物を取ると
他の棋院の関係者の人達と共に空港の出口に向かった。帰りはもう少し他を
見て回りたいと言う倉田とは別行動となった。本場の中華料理を堪能するのが
目的らしかったが。
母親と芦原が迎えに来てくれていた。2人が棋院の人達と挨拶を交わす中、
アキラは空港内を見回した。
「アキラ君、誰か探しているのかい?」
芦原がアキラの手から荷物を奪いながら尋ねる。
「あ、いえ…。」
特に約束をした訳じゃ無い。空港でなくても、あそこへ行けば、ヒカルと
ゆっくり話ができる。自然、アキラの歩調は速くなった。
自宅のベッドの上で、ヒカルは体を丸めて横になっていた。
伊角の言葉が、心に重くのしかかっていた。
携帯電話が鳴る。「塔矢アキラ」という登録名と数字が表示されている。
しばらく鳴り続けて止まる。これで3度目だった。
声を聞けば、我慢出来なくなる。会えば歯止めが効かなくなる。アキラは、
ヒカルの体に微かに残る他の誰かが残した痕跡を見逃さないだろう。
その事はちゃんと話すつもりではいた。問題は、和谷の方だ。
伊角はあえてヒカルにアキラと会わないようプレッシャーを与えに来たのだ。
もしヒカルがアキラに会い、和谷がそれを知れば再び暴走するかもしれないし
大手合いに来ないかも知れない。伊角はそれを恐れている。
でも、せめて声が聞きたい。少し話をしておくべきだろう。ようやくそういう
決意をした時、4度目の着信音が鳴った。アキラからのメールだった。



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