Linkage 61 - 65
(61)
「………はァッ……はぁ…おが…た…さん……?」
身体が離れたことが不安なのか、アキラは掠れた涙声で緒方の名を呼んだ。
緒方はアキラの顔の両脇に肘をついて、上にそっと覆い被さると、自分を呼ぶアキラの
顔を覗き込む。
涙で潤んだ瞳は、やや焦点が合ってきたのか、緒方の顔をかろうじて捉えている。
「呼んだかい、アキラ君?」
汗で顔に貼り付いた黒髪を掻き上げてやりながら、緒方は囁いた。
何かを訴えるような愁いを帯びた表情と、指先が触れる頬の想像以上の熱さに、
一瞬、胸が締め付けられる。
アキラはおずおずと右手を上げ、震える指で緒方の頬に触れると、微かに唇を動かした。
「……何て言ったんだい?もう一度言ってくれるかな?」
緒方はアキラの額を優しく撫でながら、唇に耳を寄せた。
「……おがた…さ…ん……どう…し……て……?」
アキラがなんとか声を振り絞って放ったその問いかけに、緒方は再びアキラを見つめながらも、
声を失った。
大粒の涙がアキラの双眸からこぼれ落ちる。
「…………それは……」
なんとか口を開きはしたものの、後に続く言葉などあるはずもない。
緒方はやるせない思いを抱いたまま、アキラの額に当てていた手を離すと、指先でこぼれ
落ちた涙の軌跡をなぞり上げた。
「……えっ!?」
ふと、自身の頬に触れていたアキラの右手が髪の中に差し入れられ、緒方は驚いて思わず
声を上げた。
アキラの手は、力こそ弱いものの、しかし確実に緒方の顔を自分の方に引き寄せようとしている。
(62)
「……おがたさん……」
アキラははっきりと緒方の名を呼ぶと、髪の中に差し入れた手にグッと力を込め、
顔を起こした。
呆然とする緒方の唇に、自分の唇を重ねる。
アキラのもう片方の手は、いつの間にか緒方の背に回され、バスローブをきゅっと
掴んでいた。
緒方は熱くとろけるように柔らかなアキラの唇が、自身の唇を塞いでいることに
ようやく気付くと、アキラを強く抱き寄せた。
唇の熱を奪い取るかのように更に深く重ね合わせ、酸素を求めて開かれた僅かな
隙間を縫って舌を滑り込ませる。
口腔内に侵入した異物をアキラは素直に受け入れ、情熱的に自らの灼熱する舌を絡ませた。
アキラの行為が何を意図するのか、そしてアキラが何を望むのか、緒方には皆目
見当がつかなかった。
ただ、アキラの望むままに唇を重ね、その口腔内を激しく貪り続ける。
(訊きたいのはオレの方だ)
先刻のアキラの問いかけで、一度は押さえ込まれていた緒方の獣性が、再びその姿を
露わにしていくのをもはや止める術はない。
どこにそんな力が残されていたのか、信じられないような強さで緒方を抱きしめ、
塞がれた唇の隙間から甘い鳴き声を漏らすアキラの媚態に、緒方はただ溺れることしか
できなかった。
(63)
互いの口腔内を貪欲に貪っていた2人だったが、やがて緒方を捉えていたアキラの腕から
力が抜け、音もなく滑り落ちた。
緒方はそれに気付き、湿った音を立てながら唇を離す。
アキラは名残惜しげに互いの唇を繋ぐ透明な糸を見つめながら、後頭部を枕に深く沈めた。
瞳を閉じて荒い呼吸を繰り返すアキラにしばらく見入っていた緒方は、身を起こすと
サイドテーブルに腕を伸ばし、ワセリンの容器を掴み取った。
それをバスローブのポケットに入れると、ベッドの中央で仰向けに横たわるアキラの身体を
抱き上げて枕を取り去り、同じ場所に今度は俯せに寝かせる。
緒方は手にした枕を俯せになったアキラの下腹の下に滑り込ませ、腰を抱え上げた。
アキラは顔をやや横に傾けはしたものの、相変わらず早いピッチで呼吸を続けるだけで、
謎めいた緒方の行為に何ら抵抗しない。
白く滑らかな皮膚に覆われた臀部を突き出したアキラを満足そうに見下ろしながら、
緒方はワセリンの蓋を開け、薄いクリーム色の中身を2本の指でたっぷりと掬い取ると、
目の前に露わになったアキラのアヌスに丹念に塗り込めていった。
「……ひッ………や…アッ………」
経験したことのない感触に、アキラは身体をびくつかせ、小さく呻く。
そんなアキラに構うことなく、緒方はワセリンの絡みついた中指でアキラのアヌスをなぞると、
指先をそっと滑り込ませた。
(64)
「やァッ………や…め………」
アキラが抵抗しようと身を震わせた瞬間、アヌスに食い込ませた指を一気に
第二関節まで押し進める。
きつく締めつけてくる熱い内壁を指の腹で擦り上げながら、緒方は時間をかけて、
アキラが生まれて初めて受け入れたアヌスへの侵入物を馴染ませていった。
緒方の努力の甲斐あって、徐々に軟らかくほぐれてきたアキラのアヌスに、
ようやく2本目となる指を滑り込ませると、度々跳ね上がりそうになるアキラの
腰を押さえていた手を離した。
下腹に挟んである枕と太股の合間を縫って、アキラの股間にその手を差し入れると、
枕を強く押す怒張したアキラのペニスを握り、軽く扱いてやる。
「…あァンッ………はァ……んンッ……」
ペニスへの刺激に嬌声を上げるアキラの様子に苦笑混じりの安堵の表情を浮かべ、
緒方は3本目の指をアヌスに挿入した。
股間に回した手を更に伸ばし、蟻の門渡りを指先でなぞると、緒方の指の抽送を
促すかのように、アキラのアヌスがひくつく。
(……初めてでコレか……)
あまりに素直なアキラの反応に半ば呆れながらも、緒方はアキラを十分に慣らすため、
手間を惜しむことなく指の抽送を繰り返した。
頃合いを見計らって、緒方はアキラの中から指を引き抜くと、身に纏っていた
バスローブを荒々しく脱ぎ、床へ落とした。
露わになった緒方のペニスは既に熱く猛り、下腹を擦っている。
(65)
そんな自身のペニスに視線を落とした緒方は、何を思ったか深い溜息をついた。
指三本をなんとか受け入れたアキラのアヌスに自身を挿入することが、果たしてどれほどの
苦痛をアキラに与える行為であるか、思い及ばぬ緒方ではない。
アキラはそんな緒方の胸の内を知る由もなく、肩で息をしながら微かな喘ぎを漏らすばかりだった。
緒方が固定した姿勢を崩すことなく、臀部のみを突き出した媚態を晒し続けている。
浮き出した肩胛骨がライトに照らされ、うっすらと汗で光る背に長い影を落としていた。
少女のものと見紛うほどにほっそりとした首筋のラインや、漆黒の髪の間から僅かに覗く項が、
否応なしに緒方の雄の本能を刺激し、下半身を滾らせる。
緒方はゆっくりと腰を上げると、片手でアキラの腰に手をかけて引き寄せ、もう片方の手で
鎌首をもたげるペニスの先端をアキラのアヌスへとあてがった。
慎重に腰を進め、先端を押し込む。
十分に時間をかけて慣らしておいたのが功を奏したのか、ワセリンの滑りも借りて、
緒方の亀頭はなんとかアキラのアヌスへと吸い込まれていった。
「…や…んッ………ふッ………あ…アッ!」
先程までとは明らかに存在感の異なる異物の侵入に、アキラは身を強張らせた。
横を向いた顔に落ちかかる艶やかな黒髪の合間から、痛みに耐えかねてこぼれ落ちた涙が
光るのを見て、やりきれなさに一瞬視線を逸らすと、緒方は更にアキラの内奥深くへと
自身を滑り込ませていった。
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