初めての体験 61 - 65
(61)
「え…?」
緒方がよく聞こえなかったと言うように聞き返した。ヒカルは悪戯っぽく笑って
もう一度言った。
「嘘だよ。先生が酔って絡んだなんてさ。」
「な…っ。」
緒方が言い返そうとするのを遮って、ヒカルは続けた。
「だって、せっかく遊びに行ったのに、『勝手に一人で遊んでいろ』って
先生寝ちゃうんだもん。 腹立ち紛れにその辺のもんに八つ当たりしてたら、
缶ビールが転がっててさ。オレも飲んでやるって開けたら…。ビューって…。」
緒方は絶句した。とんでもない奴だ。だが、そいつを招き入れたのは酔っぱらった自分だ。
しかも…こんな関係になってしまった…。
「悪いと思ったからちゃんと掃除したんだよ。ちょっと悪戯しただけだよ。」
ヒカルは懸命にいいわけをする。
『やっぱり…禁酒した方がいいかもしれない…』と緒方は頭を抱えた。
「…怒ってる?」
ヒカルが、恐る恐る緒方の顔を覗き込んだ。黒い大きな瞳が小動物をイメージさせる。
「いや…」
緒方はそれだけしか言えなかった。無意識にヒカルから視線をそらしてしまった。
「良かったぁ。」
無邪気に喜ぶヒカルを前に、奇妙な感情が湧いてくるのを緒方は感じた。
『もしかして…オレはこいつに填められたのか…?』
「だってオレ、どーしても先生と、してみたかったんだもん。」
ヒカルが、いつも肌身離さず持っている手帳を抱きしめながら言った。
緒方精次……十段・碁聖二冠ホルダー……
――――初段の進藤ヒカルに敗北した瞬間だった。
<終>
(62)
「ん〜〜〜〜〜!」
ヒカルは、呻いた。身に付けているものは、靴下のみ。その上、両手を前でガムテープで
ぐるぐるに縛られている。足は縛られてはいないが、この姿では逃げるに逃げられない。
―――――――チクショウ!!こんなことなら声なんか掛けなきゃ良かった!!
ヒカルの頬を大粒の涙が流れ落ちた。
男の舌が、ヒカルの涙を舐めあげた。ざらざらとしたその感触と、これから起こることへの
恐怖からヒカルは身震いした。
「ひ…卑怯だぞ…!騙すなんて…!」
ヒカルは、男を睨み付けながら、叫んだ。だが、声を震わせての精一杯の強がりは、
可愛らしく、却って、男の加虐心を煽った。
「騙してなんかいないよ。本当に気分が悪かったんだよ。」
男がニヤニヤと笑いながら、ヒカルに言った。
ヒカルが対局を終え、棋院から出てきたとき、道の端に蹲っている人影を見た。電柱に
寄りかかるようにして、呻いていた。あまりに苦しそうなその姿に、ヒカルはつい声を
かけてしまった。
「あの…大丈夫ですか?」
そう言いながら、肩に手を掛けた。
突然、強く腕を掴まれた。ヒカルは驚いて、手を引こうとしたが、あまりの力にヒカルは
男の前によろめいた。
文句を言おうと顔を上げた。男の顔が目にはいる。「あっ」と、開いた口から、悲鳴が漏れた。
いや、実際には声を出すことは出来なかった。男の大きな手がヒカルの口を塞いだからだ。
そのまま、路肩に止めてあった車に引きずり込まれた。
(63)
以前と同じ廃ビルに連れて行かれるのかと、思ったが今度は違うらしい。ヒカルは
怯えきっていた。また、この男に陵辱されるのだろうか?この前は助かったけど、今度こそ
殺されるのかもしれない…。本物か偽物かは分からないが、ネット上にはその手の画像が
流されている。前にヒカルは、偶然見てしまったその写真のため、長い間、
肉を食べることが出来なかった。
そんなヒカルを気遣うこともなく、男は無言で車を走らせ続けた。
沈黙が怖かった。いつの間にか窓の外は、ヒカルの見覚えのない景色を映している。
「どこ行くの?」
男は答えない。
「ねえ…!オレをどうするの…?」
ヒカルはすすり泣いていた。
車が止まり、ヒカルは外へ出された。周りには何もない。鬱蒼と茂った
山が目の前にそびえている。山道の手前に車を置いたまま、男はヒカルの手を引いて、
どんどん山の奥へと入っていく。
もう空には月が出ていた。昼間は美しいであろう木々や草花も、今のヒカルにとっては、
ただ不気味なだけだ。
やがて、男の足が止まった。山小屋があった。背中を押され、中に足を踏み入れる。
中は意外と奇麗で、きちんと掃除もされていた。『ここがこいつの家なのかな…?』
「ここは冬しか使わないんだ。狩猟小屋だからな。」
男が初めて口を開いた。この男に会うのは二度目だが初めて、声を聞いたような気がする。 呆然としているヒカルの体を、男が突き飛ばした。倒れたヒカルに男がのし掛かってきた。
ヒカルの抵抗を難なく封じると、男はヒカルの服を剥いでいく。夏場で唯でさえ薄着である。
簡単にヒカルは裸に剥かれ、手を縛られた。男のこだわりなのか、靴下だけが、
ヒカルの体に残された。
「この方が受けがいいんだよ。」
男が口の端だけで笑った。
(64)
「俺、本当に体調が悪いんだよ。」
男が、自分を詰るヒカルの頬を撫でながら言った。
「本当は、自分でヒカルタンを可愛がりたいんだけど、ダメなんだよ…」
「!!」
どうして、オレの名前知ってるの―――――――!?
ヒカルの目が、驚愕に見開かれる。
「大きい目だなあ…すごく可愛いよ…」
男が部屋の片隅に置いてある箱から、何かを取り出した。
「ほら、これ…これで可愛がってあげるからね。」
ヒカルは男の手に持たれているものを見た。
「なに…それ?野菜…?」
キュウリ、なす…それから…見たこともないやつ………。
「大丈夫だよ。ちゃんと奇麗に洗ってあるからね。」
「それ――――!まさか!?オレに……!?」
ヒカルの目が更に大きく見開かれた。
男はただ、ニヤニヤと笑うだけだ。男がゆっくりと近づいてくる。
「やぁ…やめて…」
ヒカルは不自由な両手を使って、這って逃げようとした。足首を掴まれて、引きずられた。
そのまま、上へ引き上げられる。
「や…いた…いたい…」
下半身をつり上げられて、男の前にヒカルの全てがさらけ出された。男の舐めるような
視線に、ヒカルの身体が朱色に染まった。ヒカルの腰を自分の胸の辺りに固定した。
ヒカルの身体は、丁度男の膝の上に、俯せに抱かれている。
男の唇がヒカルの後ろに触れた。
「ひゃ」
ぴちゃぴちゃと音を立てて、嬲り始める。
「やめて…やめてよぉ…お願いだから…」
ヒカルが、哀願した。だが、男は無視して、ヒカルの後ろを舐め続ける。
十分に湿した後、ゆっくりと指を中に差し入れられた。ゆっくりと指を抽挿させる。
湿った音がヒカルの耳に響いてくる。
「やだ…やだ…やだよぉ…」
ヒカルの泣き声を楽しむように、男の指が一本ずつ増やされていく。指が増えるその度に、
グチュグチュと中を嬲る音が大きくなっていった。
(65)
「はぁ…ああ…あぁん…ハァン…」
男の気の長い責めに、ヒカルの身体は確実に高ぶっていった。
「あふぅ…や…」
ヒカルの甘い声を上げ始めると、男は満足そうに笑って言った。
「もっと、別のものが欲しくないかい?」
ヒカルが振り返って男を見た。意味が分からないと言うような顔つきだ。
ぼんやりと自分を見つめるヒカルの目は、快感で焦点があっていない。
男はヒカルの返事を待たずに、そこに胡瓜を入れた。
「やぁ!」
ヒカルは悲鳴を上げた。胡瓜の太さは、むろん指三本よりも細い。だが、それは指より、ずっと奥まで責めることが出来た。おまけに、胡瓜の周囲に満遍なくついている突起…。
その感触にヒカルは息が詰まりそうになった。
「あ…あ…あぁ――――――」
それでも、男の執拗な責めにヒカルは遂に、放ってしまった。一度も前を触れられていないにも
関わらず……だ。
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