クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 62


(62)
法力が強いと評判の上人を求めて、ここまで来たのだ。
その弟子――弟子ならある程度修行はしているのだろうが、
見るからに穏やかで人間が出来ていそうな吉川上人に比べ
社は服装も何だか普通の町人のような水干姿だし、性格にも少し凶暴な一面がある。
こんな少年に、果たして明を救うことなど出来るのだろうか?
当惑して口籠もっている光の代わりに社が抗議した。
「な、何でそないなこと云わはるんですか!オレ、お師匠様の側から離れたないわ。
お師匠様が仕事終わらはってそん邸に行く云うならお供さしてもらいますけど、
一人になるんは嫌や。それにオレ、」
急に声が小さくなり、肩を落として社は云った。
「それにオレ・・・都人は嫌いや・・・人がたくさんいるとこに行くのも、怖い」

「怖い」などという言葉がこの少年の口から出るのは意外な気がした。
だが今社は羨ましいくらい立派なその体躯を小さく丸めて、師匠の前に項垂れている。
そんな社を前にうんうんと福々しい笑みで頷きながら、吉川上人は穏やかに説いた。
「おまえの気持ちはな、分かっとるつもりやで。せやけど儂はなぁ、こうも思うんや。
おまえはいつまでもこんな暮らし続けとったらアカン。そろそろ人と話したり、
人並みに世間と交わることも覚えていい頃やないかって」
社は泣き出す前の童のように顔を歪め、ぶんぶんと頭を振った。
「嫌や!オレはこのままずっとお師匠様と、お山で修行するんや。
人と話したり付き合ったりは本来修行には邪魔や、余計なしがらみは持たんに限る――
そう云うてお師匠様、いつも情の移らんうちに次の土地に発たらはるやないですか。
オレも人となんか付き合わんと、一生懸命修行して仏様に救ってもらう」



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