誘惑 第三部 62


(62)
「泣くな、進藤。」
「…あん時はさ、おまえに泣き顔なんか見られたくねーって、思ったけど、でも、いいんだ、もう。
だってさ、今、おまえに泣き顔見られたって恥ずかしくなんかねえもん。おまえには泣き顔だって、
もっと恥ずかしい顔だって散々見られてるし。」
「し、進藤…」
「それにオレ、塔矢の泣き顔だって、恥ずかしい顔だって、イヤラシイ顔だって、一杯見ちゃってる
もんなっ。」
「進藤っ!」
乱暴に涙を拭いながら、アキラに向かって照れ隠しのように笑った。
「へへっ…」
「キミって奴は…」
それなのに、それでもまだ言えない。
恥ずかしい事なんてない、そう思っててもまだ言えない事もある。
「……ごめん、塔矢。」
「…わかったから……もういい。いいんだよ。ボクは。いつでも、ずっと待ってるから。」
「塔矢……」
「ホラ、打つんだろ。いつまでもべそべそ泣いてるな。」
「うん、」
「ニギるよ?」
そう言ってアキラが一掴みの白石を握る。
ヒカルは鼻を啜りながら、黒石を置いた。
アキラが白石を数えて、ヒカルに告げる。
「キミが先番だ。」
「それじゃあ、お願いします。」
「お願いします。」



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