初めての体験 62
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「ん〜〜〜〜〜!」
ヒカルは、呻いた。身に付けているものは、靴下のみ。その上、両手を前でガムテープで
ぐるぐるに縛られている。足は縛られてはいないが、この姿では逃げるに逃げられない。
―――――――チクショウ!!こんなことなら声なんか掛けなきゃ良かった!!
ヒカルの頬を大粒の涙が流れ落ちた。
男の舌が、ヒカルの涙を舐めあげた。ざらざらとしたその感触と、これから起こることへの
恐怖からヒカルは身震いした。
「ひ…卑怯だぞ…!騙すなんて…!」
ヒカルは、男を睨み付けながら、叫んだ。だが、声を震わせての精一杯の強がりは、
可愛らしく、却って、男の加虐心を煽った。
「騙してなんかいないよ。本当に気分が悪かったんだよ。」
男がニヤニヤと笑いながら、ヒカルに言った。
ヒカルが対局を終え、棋院から出てきたとき、道の端に蹲っている人影を見た。電柱に
寄りかかるようにして、呻いていた。あまりに苦しそうなその姿に、ヒカルはつい声を
かけてしまった。
「あの…大丈夫ですか?」
そう言いながら、肩に手を掛けた。
突然、強く腕を掴まれた。ヒカルは驚いて、手を引こうとしたが、あまりの力にヒカルは
男の前によろめいた。
文句を言おうと顔を上げた。男の顔が目にはいる。「あっ」と、開いた口から、悲鳴が漏れた。
いや、実際には声を出すことは出来なかった。男の大きな手がヒカルの口を塞いだからだ。
そのまま、路肩に止めてあった車に引きずり込まれた。
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