失着点・龍界編 64


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その時ふわりと、赤い髪が沢淵の近くまで近付いていった。
「三谷!!、やめろー!!」
ヒカルの叫び声とほぼ同時に、顔を上げた沢淵に三谷が体当たりをするように
体をぶつけて二人で床に倒れ込んだ。
しばらく時がとまったように二人は動かなかった。
和谷達も一瞬何が起こったのか分からなかった。
ヒカルはアキラの頭を胸に抱きかかえていた。これ以上今のアキラに
ショックを与えるような場面を見せまいとするかのように。


「三谷、おまえ…」
沢淵は少し驚いたように、ゆっくり立上がった三谷を見上げる。
三谷は無表情に沢淵を見下ろしていた。
「う…」
折られた指を抱え緒方は立上がった。、蹴られた衝撃で頭を切り流れ出た
血で青色のシャツの肩口を黒く染めていた。そしてふらつきながら怪訝そうに
沢淵と三谷の方を見た。そして目を見張り息を飲んだ。
沢淵の腹部にナイフが突き刺さっていた。
だが、沢淵は騒ぐことなくなぜか嬉しそうに笑みを浮かべて三谷を
見上げていた。
「…“子猫”が、“虎”になりやがったか…」
三谷はただ黙って血に濡れた自分の手を見つめていた。
その目はやはり、虚無を見つめるように無表情だった。



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