初めての体験 64 - 68
(64)
「俺、本当に体調が悪いんだよ。」
男が、自分を詰るヒカルの頬を撫でながら言った。
「本当は、自分でヒカルタンを可愛がりたいんだけど、ダメなんだよ…」
「!!」
どうして、オレの名前知ってるの―――――――!?
ヒカルの目が、驚愕に見開かれる。
「大きい目だなあ…すごく可愛いよ…」
男が部屋の片隅に置いてある箱から、何かを取り出した。
「ほら、これ…これで可愛がってあげるからね。」
ヒカルは男の手に持たれているものを見た。
「なに…それ?野菜…?」
キュウリ、なす…それから…見たこともないやつ………。
「大丈夫だよ。ちゃんと奇麗に洗ってあるからね。」
「それ――――!まさか!?オレに……!?」
ヒカルの目が更に大きく見開かれた。
男はただ、ニヤニヤと笑うだけだ。男がゆっくりと近づいてくる。
「やぁ…やめて…」
ヒカルは不自由な両手を使って、這って逃げようとした。足首を掴まれて、引きずられた。
そのまま、上へ引き上げられる。
「や…いた…いたい…」
下半身をつり上げられて、男の前にヒカルの全てがさらけ出された。男の舐めるような
視線に、ヒカルの身体が朱色に染まった。ヒカルの腰を自分の胸の辺りに固定した。
ヒカルの身体は、丁度男の膝の上に、俯せに抱かれている。
男の唇がヒカルの後ろに触れた。
「ひゃ」
ぴちゃぴちゃと音を立てて、嬲り始める。
「やめて…やめてよぉ…お願いだから…」
ヒカルが、哀願した。だが、男は無視して、ヒカルの後ろを舐め続ける。
十分に湿した後、ゆっくりと指を中に差し入れられた。ゆっくりと指を抽挿させる。
湿った音がヒカルの耳に響いてくる。
「やだ…やだ…やだよぉ…」
ヒカルの泣き声を楽しむように、男の指が一本ずつ増やされていく。指が増えるその度に、
グチュグチュと中を嬲る音が大きくなっていった。
(65)
「はぁ…ああ…あぁん…ハァン…」
男の気の長い責めに、ヒカルの身体は確実に高ぶっていった。
「あふぅ…や…」
ヒカルの甘い声を上げ始めると、男は満足そうに笑って言った。
「もっと、別のものが欲しくないかい?」
ヒカルが振り返って男を見た。意味が分からないと言うような顔つきだ。
ぼんやりと自分を見つめるヒカルの目は、快感で焦点があっていない。
男はヒカルの返事を待たずに、そこに胡瓜を入れた。
「やぁ!」
ヒカルは悲鳴を上げた。胡瓜の太さは、むろん指三本よりも細い。だが、それは指より、ずっと奥まで責めることが出来た。おまけに、胡瓜の周囲に満遍なくついている突起…。
その感触にヒカルは息が詰まりそうになった。
「あ…あ…あぁ――――――」
それでも、男の執拗な責めにヒカルは遂に、放ってしまった。一度も前を触れられていないにも
関わらず……だ。
(66)
ヒカルが達したことに満足したのか、男はヒカルの身体を仰向けに床に横たえた。
男は、ヒカルの身体を味わうことにしたようだった。
男の責めにヒカルは翻弄された。舌で両胸の乳首を嬲られた。乳輪に沿って舐められ、
時々、歯をたてられた。突起を下から舐り上げられ、思い切り吸われた。
「ハァン…やめて……あぁん…やだぁ…くふん…」
その間も男の手は、ヒカルの股間の辺りを彷徨っていた。身体を仰け反らせて、ヒカルは
悶えた。
もう、ヒカルは抵抗しない。縛られたままの腕を頭上に押さえ付けられたまま、快感に
身体をくねらせている。
男はヒカルの体の中に、様々な異物を挿入してはヒカルを喘がせた。苦しげな、だが、
甘い吐息を、ヒカルは、愛らしい唇から吐き続けた。
しかし、さすがに、最後に男が手にしたものを見たときは、ヒカルの身体から一気に熱が
引いていった。
「や…なに…それ…?やめて…こわいよ…」
「大丈夫だよ。これ知らないの?ゴーヤーだよ。苦瓜。」
見るからにグロテスクなそれは、今までのものなど問題にならないくらいの大きさだ。
全体にびっしりとついている突起といったら……胡瓜の比ではない。
「やだ――――――――――!」
男は、悲鳴を上げて逃げるヒカルの腰を押さえ付け、足を大きく開かせた。
「入れるよ。」
と、言うが早いかそのまま一気に突き入れた。
「うぅ――――――――――!!!」
ヒカルは、激しく顔を左右に振った。涙が飛び散った。
「た…たすけてぇ!」
「ああ!いたっ!やめてぇ…やめてよぉ…ね…おねが…あぁ!」
ヒカルの泣き声が、小屋の中に響きわたる。男が手にした物を動かす度に、ヒカルは
泣き叫んだ。
暫くすると、声はすすり泣きに変わり、やがて、聞こえなくなった。
(67)
どうやって、家まで帰ったのか憶えていなかった。男が、棋院の近くまで送ってくれた
ことは朧気ながら記憶にあった。
漸く、家についたとき、両親は寝ないで待っていた。無断外泊をひどく叱られたが、
まるで気にならなかった。
それよりも、男にされたことのショックの方が大きくて―――
あの男にまた会うかもしれないと思うと、怖くて家から出られなかった。ヒカルは、
何日も家の中で震えて過ごした。
いくら誘っても来ないヒカルを、アキラは恋しく思っていた。体調が悪くて、
寝込んでいるらしい…。見舞いも断られてしまい、途方にくれた。
――――――進藤に会いたい。
会えないとなると、ますます想いが募る。もちろん、募っているのは恋心
だけではない。
アキラはパソコンを起動させた。お気に入りのサイトを見るためだ。そこには、
ヒカルのそっくりさんのあられもない写真が掲載されている。裏は更に過激だ。
当然、会員用のパスは、とうにゲット済みである。
「あ…新作案内のメールが来てる…」
慌てて、サイトにアクセスした。
「え…?お…お野菜シリーズって……」
思わず、生唾を呑み込んだ。タイトルだけで、突き上げるような欲望が湧いてくる。
速攻で、購入ボタンをクリックした。
<終>
(68)
今日は、森下門下の研究会の日、ヒカルは、次の対局相手を誰にしようかと悩んでいた。
さりげなく周囲に目を走らせた。さながら獲物を物色する鷹のようだ。
しかし、本人は鷹のつもりでも、端からみれば、ヒカルは可愛らしいインコか文鳥くらいにしか見えない。小首を傾げて話しかける様は、まるで愛らしい小鳥が餌をおねだりして甘えているかの様だった。
そんなヒカルを和谷は見つめていた。
和谷は、ヒカルと関係をもって以来、すっかり彼に魅了されてしまった。
しかし、ヒカルは一度関係を持った――ヒカルの言うところの対局――相手には、
興味を持たなかった。むろん、例外は何人かいる。
だが、その相手は、和谷ではなかった。和谷は、ヒカルが様々な高段者に興味を
持っていることを知っていた。ヒカルは強い相手が好きなのだ。
オレは進藤より弱い――――和谷は切なかった。あの時、ヒカルに悪戯さえしなければ、
こんな思いはせずにすんだのに…。
和谷が、ヒカルを悲しげに見ていることに気づいて、冴木が話しかけてきた。
「どうしたんだ?和谷。進藤ばかり見て…」
「冴木さんか…何でもねえよ……」
和谷が覇気なく答えた。そして、ふぅっと大きな溜息をついて、俯いてしまった。
そんな和谷を見て、冴木はそれ以上何も聞けなくなった。
「進藤。」
研究会が終わったとき、ヒカルは冴木に声をかけられた。
「冴木さん…。何?」
冴木は和谷が帰ったのを確認してから、ヒカルに向かって切り出した。
「話があるんだけど…。いいかな?」
ヒカルは、ほくそ笑んだ。『向こうから来たか。』そんな考えをおくびにも出さず、
「いいよ。」
と、零れんばかりの笑顔を返した。
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