Linkage 66 - 70


(66)
「ヒッ……ヤダアァッ!!」
 激痛に涙声で叫ぶアキラの背に幾度となく唇を落としながら、ようやく根元まで含み込ませる。
熱く包み込むアキラの内壁は、緒方を痛いほどに強く締めつけていた。
しばらくその感覚に酔いしれていた緒方は、熱い溜息を漏らすと、アキラの下腹を支えていた枕を
そっと引き抜く。
身体を繋いだまま、器用にアキラを抱き起こして涙で濡れた顔を緒方の方に向けさせると、腰に
アキラの両脚を回させ、自分の太股の上に座らせた。
「……アキラ君……」
 しゃくり上げるアキラの乱れた髪を手櫛で整えてやりながら、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる目尻に
唇を寄せ、囁きかける。
緒方の声に瞳を開いたアキラは、まだ完全に焦点が合わないものの、なんとか緒方の顔を凝視した。
「……おがたさん……ボクのこと…ひっく…きらいなのぉ……?」
 肩を震わせながら、弱々しく握りしめた拳で緒方の胸をこつんと叩く。
消え入りそうな声も、縋るようなはかなげな表情も、緒方には既に覚えがあるものだった。
緒方はその握り拳を手の中に優しく包み込むと、自嘲的な笑みを浮かべた。
「……オレを嫌いになったんじゃないか?」
 アキラは何も答えずに、ただ緒方の肩に顔を埋めた。
肩にかかるアキラの吐息が温かい。
緒方はアキラの手を解放してやると、か細い背中に腕を回した。
(全て壊したって構わないだろ……。今更善人ぶってどうする……)
 アキラの姿勢が崩れないよう片手で背中を支えながら、もう片方でアキラの腰を持ち上げた。
迷いを振り切るように、その腰を再び自分の方へと強く引き寄せる。
「あアァッ……やッ……おがたさぁんッッ!!」
 身を裂くような痛みに悲鳴を上げながら、それでも緒方の名を呼ぶアキラは、必死に両手で
緒方の肩を掴んだ。
緒方はただ、自身の欲望の行き着く果てを求めて、アキラの身体を激しく揺さぶり続ける。
声にならない声を上げて、アキラが緒方の肩に爪を食い込ませた瞬間、緒方はアキラの身体を
強く抱いて、その中に精を解き放った。


(67)
 緒方はアキラの中に果てた後、しばらく華奢なその身体を抱いたまま動かなかった。
やがて、アキラの汗で頬や額に貼り付いた髪を整えると、目尻からこぼれ落ち、
既に乾きかけている涙の跡をそっと指先でなぞる。
アキラは気を失ったまま緒方の胸の中で眠ってしまったのか、荒かった呼吸は徐々に
穏やかな寝息へと変わり始めていた。
 そんなアキラを揺り動かさないよう緒方は身体をずらすと、アキラをベッドの中央に
寝かせる。
(射精してたのか……)
アキラの下腹を濡らす白濁した液体は、まぎれもなくアキラ自身のものだった。
緒方はシーツの端で手早くそれを拭き取り、アヌスの周りも拭って出血がないのを
確認すると、羽布団を掛けてやった。
立ち上がってサイドテーブル上のライトを消し、煙草とライターを手に取り火をつけると、
床に脱ぎ捨てられたバスローブを拾い上げて羽織る。
アキラが爪を立てた肩に生地が擦れ、微かに痛みが走った。


(68)
 寝室を出てリビングの照明をつけると、再び寝室へと戻り、壁に凭れて深く吸い込んだ
煙を吐き出す。
僅かに開けられたドアから、細くリビングの光が射し込んでいる。
サイドテーブル上の時計は2時半を過ぎたところだった。
薬の効果はもう切れているはずである。
 アキラは何事もなかったかのように、小さな寝息を立てて深い眠りについている。
緒方はただじっと、そんなアキラの様子を見つめながら、紫煙をくゆらせていた。
(昔と変わらないアキラ君じゃないか……)
 かつて、塔矢家で子守をしているうちに緒方の腕の中で眠ってしまった幼いアキラの
あどけない寝顔が、目の前で眠るアキラの寝顔に重なる。
凭れていた身を起こし、サイドテーブル上の灰皿に煙草を押しつけると、緒方は再び
力無く壁に凭れた。
そのまま床に崩れ落ち、しゃがみ込む。
「……それをどうしてオレは……」
 自責の念に駆られ、俯きながら低く呟いた緒方の額に当てた両手が微かに震えていた。


(69)
「……ン……おが…た…さん……」
 突然のアキラの掠れた呼び声に、俯いていた緒方は色を失い、慌てて顔を上げた。
すかさず立ち上がると、アキラの顔を覗き込む。
アキラは一時的には苦悩するように眉根を寄せ、ごく僅かに荒い呼吸をしていたものの、
間もなく穏やかな寝顔に戻った。
 アキラの声が寝言であることに安堵の溜息をついた緒方は、リビングへ向かうと、
アーロンチェアに深く身を沈めた。
リクライニングを一気に倒し、アームレストに両肘を預ける。
そのままの姿勢で回転し、水槽の方を向くと、とりたてて興味もなさそうな様子で、
気ままに泳ぐ熱帯魚に視線を走らせた。
 しばらくして、中でも最も小さい1匹の尾鰭に傷が付いていることに気付き、
その泳ぎをじっと追う。
ふと、謎の少年との一局にショックを受けた胸中を吐露した際の、アキラの脆く
はかなげな表情が思い出され、思わず緒方は胸を押さえた。
(アキラ君の精神的ダメージにオレが追い打ちをかけてどうする。レイプの
ダメージが肉体以上に精神に響くことは、オレが身をもって知ってるじゃないか……)
 風化することなく心の奥底に沈殿した自らの苦い過去の記憶が否応なしに蘇ってくる。
そんな過去への感傷に浸る自身を制するかのように、緒方は軽く頭を振った。
ポケットの中のライターを取り出し、手の中で転がし始める。
「……オレに抱かれてるときも同じ顔をしてたな、アキラ君……。何がそうさせたんだ?
例の少年との一局か?……それとも、オレの…………」
 緒方は冷たい輝きを放つ直方体の金属塊に悄然として目を落とすと、答えを求めて
縋るような思いで語りかけた。


(70)
 憔悴しきった表情のままアーロンチェアに身を沈めていた緒方だったが、
やがて、のろのろと立ち上がると浴室へ向かった。
シャワーのコックを勢いよく捻り、降り注ぐ冷水を頭から浴びる。
通常であれば耐え難い水の冷たさも、今の緒方にはむしろ生温く感じられて
ならなかった。
 冷え切った身体に残る水滴を荒々しく拭き取ると、緒方はバスタオルを
腰に巻き、アキラが眠る寝室のクローゼットの前に立った。
静かに扉を開け、下着とセーターとスラックスを取り出すと、足音を殺して
リビングへ向かう。
服を身につけた緒方は、本棚の脇にあるスツールを持ち、リビングの電気を
消して再び寝室へ戻った。
アキラの眠るベッドのすぐ横にスツールを置くと、窓際へと歩み寄り、
ブラインドのスラットを外部からの光が入るよう回転させる。
寝室全体がなんとか見渡せる程度の明るさになったことを確認すると、緒方は
ゆっくりとスツールに腰掛けた。
 アキラは寝顔を見守る緒方の方に身体を傾け、静かな寝息を立てている。
緒方はそんなアキラの頬に掛かる黒髪を優しく掻き上げてやると、羽布団から
はみ出した手をそっと持ち上げ、ほっそりとした白い指に唇を寄せた。
(……もうオレなんかに見守られたくないか、アキラ君は……。ただ、せめて
朝まではキミの側にいさせてくれよ……)



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