平安幻想異聞録-異聞- 66 - 70


(66)
アキラは、目を閉じ、ヒカルの上半身をきつく抱きしめながら、腕の中の
その体が熱くなるのを感じる。
「あ……あ……あぁっ…ん…」
その鼻にかかったような喘ぎ声は、アキラがいつも知っている気力に満ちた
ヒカルの闊達な声音からは想像がつかないほどに甘い蜜の艶。
目を閉じても、抱きしめた体の着衣の下に蠢く異形の動きが、アキラには
わかってしまう。
それはおぞましい体をすり付けるようにくねらせながら、思い思いの場所に
とりつき、ヒカルの精気を引きだしては、すすっていた。
体から力が抜かれていくようなその感覚に、ヒカルがか細い声を上げて啼く。
「ぁ……ぁぁ……ぁ……」
ヒカルが僅かに動く指先で、助けを求めるように、アキラの着物の裾を握った。
それを感じたアキラは、手探りで重い手を動かし、そのヒカルの指先を勇
気づけるように握りしめた。
異形のモノの思うままに僅かに立て膝のまま開かされたヒカルの両の足の間に、
妖魔がそのが魔手をのばし、太ももを這い、中心を扱き、1匹はヒカルの
腹の中への侵入を果たして、中の壁を頂点に達するのを即するように刺激する。
中のそれは、その白いヒゲでヒカルの媚肉をくすぐり感覚を高めた後、
淫液を塗りたくりながら、大きく体をねじった。
「ひぃっ…!っ……やんっ!…………」
背筋を駆け抜けた峻烈な刺激に、ヒカルの悲鳴があがる。
異形のまつろうヒカル自身のモノは、完全に勃ち上がらり、先端から
ヒカル自身の体液をあふれさせ始め、そこを濡らすのは魔物の淫液だけでは
なくなっていた。
中の魔物が、身をうねらせ、更に奥に淫液を送り込み、繊毛を使って強い力で
ヒカルの奥の壁にゴシゴシと塗り込む。
「はぁぁン……あっ!………ふぁ…」
中の弱い部分を散々にねぶられ、抗いようのない快楽に飲み込まれて、
ヒカルは蕩けるよな熱のこもった声を上げ続けた。


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それは、魔物がヒカルの秘門に体を抜き差しする湿った音と共に、アキラの耳ニつく。
まるでアキラの無力を責めているようだった。
異形の蛇達の動きがグネグネと激しさを増す。
腕の中のヒカルの呼吸が急激に速くなり、火照った肌がさらに熱くなった。
ヒカルの肌が、断続的に大きく波打つ。
「……はっ!…あ!……あ!…あぁッ!」
腹の奥底から思わずといった風に押しだされた高い声があがる。
アキラの着物の裾を掴んでいたヒカルの指が震えた。
「あぁっ、やっ!やっ! はんっっ!!!」
その嬌声の振幅に合わせるように、指に力がこめられたり、抜かれたりしている。
やがて、自分の中でうねるモノに突き上げられて、奈落の底に落とされる感覚に、
ヒカルは淫声を上げながらひれ伏し、自分自身の露を放った。
それを待っていたのだとばかりに、ヒカルが吐き出した精液に異形のモノが群がり、
我先にとそれを啜る。
空気の重さがわずかに緩む。
ようやっと息がつけるようになった感覚に、アキラがひとつ大きく呼吸をする。
ヒカルもそれにならって、まだ熱さの残る息を吐きだし、力を失ってアキラの
腕の中からずり落ちそうになる自分の体を支えようと、わずかに体を返して、
アキラの胸にしがみついた。
しかし、その時、再び部屋の空気が重さを増し、二人の自由をうばった。
終わりではなかったのだ。
それまでヒカルの中にあったものが、満足げに舌なめずりをしながら体を引きぬくと、
また別のモノがグチャリと音をさせてヒカルの中に入り込んできた。
ヒカルの口から、うめき声とも喘ぎ声ともつかない小さな悲鳴があがる。
それはすぐに甘い艶を含んだすすり泣きに代わった。


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どこかで最初のトリが時を告げ、賀茂邸の明かり採りの窓から、少しひんやりした
秋の朝の風が吹き込んだ。
ヒカルが意識を取り戻したのはアキラの膝の上でだった。
体中のどこにも力が入らない。まるで自分の体ではないようだ。
自分達は昨夜の姿勢のまま、アキラはヒカルの上半身をかばうように抱え込み、
ヒカルはその膝の上に体重を預けた姿勢で気を失っていたらしい。
灯明台は倒れ、寝所はぐちゃぐちゃに乱れ、部屋はひどい有り様だった。
「ぼくは何も見ていないから」
突然降ってきた声にヒカルは驚いて、目だけで自分の上にあるアキラの顔を見た。
アキラがつむっていた目をゆっくりと開いた。起きていたのだ。
「ごめん」
アキラがつぶやくように謝った。
何もできなくて、ごめん。と。


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アキラは、ヒカルを抱きかかえて、別の部屋に連れて行き、寝かしつけてくれた。
もっとも、ヒカルもアキラも体格体重は同じぐらい、おまけに陰陽師修業に明け
暮れた生活のためにアキラは大した腕力もなく、途中何度もよろけては、
ヒカルを落としそうになったけれど。
ヒカルの体を薬湯で清めて、清潔な着物に着替えさせる。
魔物にすっかり精気を抜き取られて、体の動かないヒカルは、人形のように
アキラのなすがままだった。
それが終わると、アキラはどこからともなく、粥を持って来た。
その匂いをかいだだけで、ヒカルは胸が悪くなって、食べたくないと首をふったが、
アキラは「少しでも食べた方がいい。これには薬も入ってるから」とヒカルを
褥の上に抱えおこす。
腕を持ち上げることもできないヒカルのために、アキラはその粥をひとくちひとくち、
ヒカルの口元に運んで食べさせてくれた。
食べてみれば、その薄く塩の味のついた粥は、体に染みるように美味しくて、
ヒカルはスズメのひな鳥よろしく、アキラが口元に運んでくれるそれを
次から次へとねだって食べていた。
ふとヒカルは、アキラの腕にはまだ血がこびりつき、昨夜の惨状を留めたままなのに
気がついた。
「おまえ、オレのことはもういいから、自分の手当てしろよ」
さっきまでは喋るのもおっくうだったのに、今は楽に声が出た。
やはりアキラの言う通り、物を食べたのがよかったんだろう。
「君がこれを全部食べ終わったらね」
そう言って、アキラはまた餌をひな鳥の口に運ぶ。ヒカルは遠慮なくぱくついた。
「すまなかった」
「え?」
「大きな口をたたいておいて、僕は何もできなかった。佐為殿に合わす顔がない。
 こうして君と顔を合わすことさえ恥ずかしい」
恥ずかしいというなら、夕べ、魔物に嬲られてあられもなく乱れる様をお前に
さらした自分はどうなるんだと思ったが、思い出したくもないので黙っていた。
「こんな筈じゃなかった……、いまさら言いわけにしか聞こえないかもしれないが、
 本当に強力な結界だったんだ。あれは」
それはわかる。アキラの陰陽術の腕は、あの妖怪退治の折りにヒカルも見せつけ
られたし、こういう時に手を抜く奴じゃないこともよく知っている。


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「それが、あんな苦しみもせず、暴れもせずに異形が結界を抜けてしまうなんて。
 そんなこと…こちらから呼ばない限りは有り得ない」
「呼ぶ?」
アキラは頷いた。
「こちらから、結界の中に招き入れるか、あるいはその妖魔を招き寄せる何かの『印』が
 結界の中にあるのでないかぎり、考えられないことだ」
ヒカルは黙って聞いていた。
「もちろん、ぼくは奴を呼んだりはしていない。だから、近衛、正直に答えてくれ。
 君は何か『印』を持っているんじゃないか?」
「ば、馬鹿言うな!誰が好き好んで、あんなの呼び寄せるって言うんだよ!」
「もちろん、君はそうだろうさ。でも、君自身気付かない『印』をどこかに持っている
 可能性があるんだ。最近なにか、君の周りで変わったこと、身に付けているもので
 変えたものはないか? 例えば、それは太刀の腰に履くための紐を変えたとかいう
 ささいな事でかまわないんだ」
ヒカルは考えを巡らした。身に付けるものを変えたといえば、自分はあの竹林の夜以来、
ずいぶん身の回りのものを新調している。太刀はなくしてしまったし、狩衣も指貫も、
汚れて破れてもう使い物にならなかったのだから。
それを正直に話すと、アキラは、ヒカルを再び褥の上に横たわらせ、丁寧にヒカルの
太刀を検分したあと、
『仕立屋の中に座間の手の者がいなかったとも限らない。表からわからなくても、
 生地の中側に何かの印が縫い込まれているかもしれない』
と言って、ヒカルの着物も丁寧に縫い目までほどいて調べはじめた。
調べ終わって溜め息をつく。
「ない?」
「ないな」
アキラがゆっくり首を振る。
「おまえ、取りあえず傷の手当てしてこいよ。見てるほうが痛いから」
「うん…。着物、まだ新しいのにほどいてしまって悪かった」
「いいよ、どーせ、もう使いもんにならないだろうし」
「とにかく、今は体を休めてくれ」
「ああ」
ヒカルはまだほとんど動かない体の首だけを巡らせてアキラを見た。
アキラはがっくりとうなだれて、空いた粥の腕を持ち立ち上がる。
部屋を出ていこうとして、不意に振り返った。
「まだ、調べてないものがあった」
「何?」
「君自身だよ」



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