日記 66 - 70


(66)
塔矢、緒方先生、昨日は本当にゴメン。
つまらないことで泣いたりして。
花言葉なんて知らなかったから、突然飛び込んで来た文字に
どうようしちゃったんだよ。
オレの側に佐為は今もいるのかな?
オレに見えないだけなのかな?
それなら、どうして見えなくなっちゃったんだろう?
そんなこと頭の中で、ぐるぐる考えちゃったんだよ。
佐為に会いたい…佐為に会いたいよ。そればっかり考えてる。
塔矢の家に、泊まること電話しといてよかった。
きっと、ひとりでなんて、寝れなかったよ。
塔矢がオレをだっこするようにして、一緒に眠った。
赤ちゃんが、お母さんの心臓の音に安心するって聞いたことある。
オレもすごく安心した。
ホントは、今日も塔矢と一緒に眠りたかったけど、
さすがに3日連続はゆるしてもらえなかった。
塔矢も、明日からまた忙しいらしい。
がまんする。


(67)
和谷から電話があった。
花火大会やるんだって!
オレ、花火大好き。
明日が楽しみだ。
自分で好きな奴、持ちよるんだって。
公園でやるから、今度は、打ち上げしても大丈夫かな?
晴れるといいな。
さすがに、てるてる坊主をつるす年じゃ、ねえもんな。


(68)
ショックだ!
雨だよ!大雨!
夜までに上がるように祈ったけど、ダメだった。
てるてる坊主つるせば、よかったのか?
まあ、いいや。明日に伸びただけだし。
家にいたおかげで塔矢と話できたし。
オレもケイタイ買おうかな…。
そしたら、メールとかできるし。
親の同意とかいるのかな?


(69)
今日は、この前の仕切直しをした。
花火大会だ。
オレは打ち上げをたくさん持っていったら、
「打ち上げしかねーのか」と、突っ込まれた。
普通のもちゃんと持っていったのに…。
和谷の持ってきた打ち上げを上げると、中から、
カエルのぬいぐるみが飛び出して、びっくりした。
それをオレにくれたんだけど……
男がぬいぐるみもらってもさあ。
理由が、メンバーの中で一番似合いそうってどーゆー意味だ!
そりゃ、冴木さんや伊角さんがもってたら、ちょっとだけどさ…
そういや佐為ってガマ苦手だったなあ。
でも、こーゆーのは、かわいいよな。


(70)
 花火大会中止の連絡を入れた時、ヒカルがえらくがっかりした声を出した。それを
聞いて、つい、「明日、晴れたらやるから。」と、言ってしまった。電話を切った後、
慌てて、他の友人達に連絡を入れた。

待ち合わせの場所に行くと、ヒカルがもう待っていた。まだ、陽は沈みきっていない。
「もう、来てたのか?」
和谷と一緒に来た伊角が、やれやれと首を振った。ヒカルは、恥ずかしそうに「へへ」と、
笑った。
待ちきれずに、かなり早くから来ていたらしい。
 ヒカルが持ってきた花火を見ると、ほとんどが打ち上げ花火だ。
「なんだ?打ち上げばっかじゃねえか。」
「だって、この前、塔矢とやった時、打ち上げはしなかったから…住宅街だったしさ…
 遠慮したんだ。今日は、絶対これやるって決めてたんだよ…」
和谷のあきれ顔に、ヒカルは頬を膨らませ反論した。和谷は、少しムッとしたが、顔には
出さなかった。ヒカルの口から、アキラの名前が出る度、胸がむかつく。だが、せっかく、
ヒカルが今日を楽しみにしていたのだから、それに水を差したくなかった。
 後から、来た連中にも同じことを言われ、ヒカルはすっかり拗ねてしまった。ヒカルを、伊角達が懸命に宥めている。そんな彼らに、ヒカルは、「ウソだよ」ペロッと舌を出した。
 和谷は、自分がヒカルを見て微笑んでいたことに、暫く気づいていなかった。
ヒカルの快活な笑い声が耳に心地よかった。



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