無題 第2部 67
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激しい交合の果てに、アキラは緒方の腕の中で気を失った。
緒方はアキラの身体をそっと横たえ、下肢にまとわりつく汚れを簡単に拭った。
それから汗で濡れて頬や額に張りつく髪を、そっと手で払って整えてやる。
その手に反応してか、きつく眉を寄せていたアキラの顔が少しだけ和らいだ。
目を閉じるとまだ幾分子供っぽさの残るその顔は、先程彼を誘惑した淫魔と同じ人物とは
とても思えない。
緒方は悲痛な面持ちでその少年を眺めた。
アキラが目を開いて、自分の顔を覗き込んでいる緒方をじっと見詰めた。
だがその目が何を語っているのか、緒方にはわからなかった。
緒方は何かを諦めたように目を閉じて、言った。
「アキラ、シャワーを浴びるんだ。」
その声にアキラは大人しく従い、緒方の首に手を回した。
「ごめんなさい。」
消え入りそうな細い声で、アキラが言った。
「ごめんなさい。
あんな事、言うつもりじゃなかったんだ。
あんな事、思ってた訳じゃなかったんだ。
なのに…」
緒方はアキラの身体を抱き起こしてやり、よろける足元のアキラを支えて浴室へ連れて行った。
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