Linkage 67 - 68


(67)
 緒方はアキラの中に果てた後、しばらく華奢なその身体を抱いたまま動かなかった。
やがて、アキラの汗で頬や額に貼り付いた髪を整えると、目尻からこぼれ落ち、
既に乾きかけている涙の跡をそっと指先でなぞる。
アキラは気を失ったまま緒方の胸の中で眠ってしまったのか、荒かった呼吸は徐々に
穏やかな寝息へと変わり始めていた。
 そんなアキラを揺り動かさないよう緒方は身体をずらすと、アキラをベッドの中央に
寝かせる。
(射精してたのか……)
アキラの下腹を濡らす白濁した液体は、まぎれもなくアキラ自身のものだった。
緒方はシーツの端で手早くそれを拭き取り、アヌスの周りも拭って出血がないのを
確認すると、羽布団を掛けてやった。
立ち上がってサイドテーブル上のライトを消し、煙草とライターを手に取り火をつけると、
床に脱ぎ捨てられたバスローブを拾い上げて羽織る。
アキラが爪を立てた肩に生地が擦れ、微かに痛みが走った。


(68)
 寝室を出てリビングの照明をつけると、再び寝室へと戻り、壁に凭れて深く吸い込んだ
煙を吐き出す。
僅かに開けられたドアから、細くリビングの光が射し込んでいる。
サイドテーブル上の時計は2時半を過ぎたところだった。
薬の効果はもう切れているはずである。
 アキラは何事もなかったかのように、小さな寝息を立てて深い眠りについている。
緒方はただじっと、そんなアキラの様子を見つめながら、紫煙をくゆらせていた。
(昔と変わらないアキラ君じゃないか……)
 かつて、塔矢家で子守をしているうちに緒方の腕の中で眠ってしまった幼いアキラの
あどけない寝顔が、目の前で眠るアキラの寝顔に重なる。
凭れていた身を起こし、サイドテーブル上の灰皿に煙草を押しつけると、緒方は再び
力無く壁に凭れた。
そのまま床に崩れ落ち、しゃがみ込む。
「……それをどうしてオレは……」
 自責の念に駆られ、俯きながら低く呟いた緒方の額に当てた両手が微かに震えていた。



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