平安幻想異聞録-異聞- 67 - 68
(67)
それは、魔物がヒカルの秘門に体を抜き差しする湿った音と共に、アキラの耳ニつく。
まるでアキラの無力を責めているようだった。
異形の蛇達の動きがグネグネと激しさを増す。
腕の中のヒカルの呼吸が急激に速くなり、火照った肌がさらに熱くなった。
ヒカルの肌が、断続的に大きく波打つ。
「……はっ!…あ!……あ!…あぁッ!」
腹の奥底から思わずといった風に押しだされた高い声があがる。
アキラの着物の裾を掴んでいたヒカルの指が震えた。
「あぁっ、やっ!やっ! はんっっ!!!」
その嬌声の振幅に合わせるように、指に力がこめられたり、抜かれたりしている。
やがて、自分の中でうねるモノに突き上げられて、奈落の底に落とされる感覚に、
ヒカルは淫声を上げながらひれ伏し、自分自身の露を放った。
それを待っていたのだとばかりに、ヒカルが吐き出した精液に異形のモノが群がり、
我先にとそれを啜る。
空気の重さがわずかに緩む。
ようやっと息がつけるようになった感覚に、アキラがひとつ大きく呼吸をする。
ヒカルもそれにならって、まだ熱さの残る息を吐きだし、力を失ってアキラの
腕の中からずり落ちそうになる自分の体を支えようと、わずかに体を返して、
アキラの胸にしがみついた。
しかし、その時、再び部屋の空気が重さを増し、二人の自由をうばった。
終わりではなかったのだ。
それまでヒカルの中にあったものが、満足げに舌なめずりをしながら体を引きぬくと、
また別のモノがグチャリと音をさせてヒカルの中に入り込んできた。
ヒカルの口から、うめき声とも喘ぎ声ともつかない小さな悲鳴があがる。
それはすぐに甘い艶を含んだすすり泣きに代わった。
(68)
どこかで最初のトリが時を告げ、賀茂邸の明かり採りの窓から、少しひんやりした
秋の朝の風が吹き込んだ。
ヒカルが意識を取り戻したのはアキラの膝の上でだった。
体中のどこにも力が入らない。まるで自分の体ではないようだ。
自分達は昨夜の姿勢のまま、アキラはヒカルの上半身をかばうように抱え込み、
ヒカルはその膝の上に体重を預けた姿勢で気を失っていたらしい。
灯明台は倒れ、寝所はぐちゃぐちゃに乱れ、部屋はひどい有り様だった。
「ぼくは何も見ていないから」
突然降ってきた声にヒカルは驚いて、目だけで自分の上にあるアキラの顔を見た。
アキラがつむっていた目をゆっくりと開いた。起きていたのだ。
「ごめん」
アキラがつぶやくように謝った。
何もできなくて、ごめん。と。
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