無題 第2部 68


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「寒い…」
アキラの身体が小さくカタカタと震えていた。
呼吸が浅く、頬が紅潮し、瞳が潤んでいるのはシャワーを浴びた直後だからでも、激しい行為
のせいでもなかった。
緒方はアキラの顔を覗き込んで言った。
「熱が…あるな」
このまま一人で返す訳には行かない。緒方はそう思った。
だが、彼はここに泊まる事を了承するだろうか?拒否の返答を怖れながら、緒方は尋ねた。
「泊まっていくか…?」
その問いに、アキラは小さく頷いた。
目の前の頼りなく儚げな少年は、さっきベッドの上にいた淫蕩で妖艶な魔物と同じ人物とは
到底信じられない。

情事の跡の乱れたシーツを見て、暗澹たる心持ちで、緒方は大きく息をついて、首を振った。
汚れたシーツを引き剥がし、機械的にベッドメイクを進めた。
これから、オレはどうしたら良いんだ。
いや、オレの事などどうでも良い。アキラを、これからどうしたら良いんだろう。
彼をあんなに風にしてしまったのはオレだ。
あれは、今まで見ないふりをして誤魔化してきたものが、暴露されただけだ。
「言うつもりはなかった」とは言っていたが、だが本心でもあったのだろうと思う。
憎しみも、怒りも、あって当然だ。受けて当然のものを、今になってやっと受けただけだ。
むしろそれは時間の経った分だけ彼の中でゆっくりと醸成され、今になってやっと、より屈折
した形で露わにされた。
それに気付きもせずに、先に彼をなじった自分を、緒方は激しく責めた。
情けないにも程がある。自分は彼に何をした?そして彼に、何を求めていたのだ?



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