失着点・展界編 68


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階段を降りて建物の外までアキラを見送った。
「会えるかどうかも分からないのに、あちこちの碁会所を探し回ったんだ
ろうな…。」
声がして、ヒカルが振り返ると伊角が立っていた。
「…君たちにはかなわないよ。…余計な事をしてすまなかった。」
「伊角さん…」
「オレももう帰るよ。もう付きまとったりしないから安心してくれ。
それじゃあ、手合いの日に、またな。」
「う、うん…」
伊角に軽く笑顔で手を振られ、ヒカルもつられて笑顔で手を振る。
「…たとえお前に何があっても、塔矢はお前を信じ続けるんだろうな…。」
「え…?」
伊角が最後に何を言ったかはヒカルには良く聞き取れなかった。
少し胸に引っ掛かるような気がしたが、ヒカルは碁会所に戻った。
アキラと会わないと決めた以上、気持ちを紛らすには打つしかなかった。
大手合いの当日、ヒカルはギリギリまで棋院会館に入らなかった。
アキラの前で、和谷と顔を合わせるのを避けたかった。
アキラは普段通りに早めに到着していた。和谷というその相手に、大局前に
挨拶をしておくのもいいかなと考えていた。
玄関に入って直ぐ、アキラは突き刺すような視線を感じて顔をあげた。
会場の入り口脇の壁にもたれて腕組みをし、じっとこちらを睨み据えている
少年がいる。その顔には今までに何度か会った覚えはあった。
「彼が…和谷…か。」



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