無題 第2部 69


(69)
最初のあの夜、嫌がるアキラを無理矢理抱いたあの時、何も言わずに、何も聞かずに、
彼を一人帰してしまった事を、引き止めなかった事を、今更ながら痛烈に悔やんだ。
あの時、例え彼が聞き入れなくても、それでも、謝罪し、許しを請い、それから自分の想い
を告げるべきではなかったのか?
乱暴をして済まなかったと、それでもお前が欲しかったと、お前を愛していると、どうして
告げなかった?
底の浅い後悔と自分自身を責める言葉に耽溺して、自分の傷だけに酔って、傷付けるだけ
傷付けたまま彼を一人にして。
自分の罪を見せ付けられるのが怖くて、彼の傷から目を逸らして。
拒絶されるのが怖くて、求める事さえしないで。
その結果がこれだ。
ちっぽけなプライドと自分の臆病さが、どれだけ彼を痛めつけたか。

生々しい傷痕をやっと覆ったかさぶたを引き剥いで、傷口を見つめて、より一層深くその傷を
えぐり続けるようなアキラを、オレは止める事さえ出来ないのか?
そもそも自分がつけた傷を、癒そうなどと考えること自体が、傲慢な事なのかもしれない。
だとすればこんな虚しい関係をこれからも続けていく事しか、オレには出来ないのか?
自分に出来るのは、請われる限り、彼の望むものを与え続ける事だけなのか?
それが彼が真に望むものでは無い事を知っているのに。
それとも、そうやって身体は投げ出しておいて心は明け渡そうとはしない事が、おまえの、
オレへの復讐なのか?
おまえを奪ったつもりでいた。だが奪われていたのはオレの方だったのか?



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