平安幻想異聞録-異聞- 69


(69)
アキラは、ヒカルを抱きかかえて、別の部屋に連れて行き、寝かしつけてくれた。
もっとも、ヒカルもアキラも体格体重は同じぐらい、おまけに陰陽師修業に明け
暮れた生活のためにアキラは大した腕力もなく、途中何度もよろけては、
ヒカルを落としそうになったけれど。
ヒカルの体を薬湯で清めて、清潔な着物に着替えさせる。
魔物にすっかり精気を抜き取られて、体の動かないヒカルは、人形のように
アキラのなすがままだった。
それが終わると、アキラはどこからともなく、粥を持って来た。
その匂いをかいだだけで、ヒカルは胸が悪くなって、食べたくないと首をふったが、
アキラは「少しでも食べた方がいい。これには薬も入ってるから」とヒカルを
褥の上に抱えおこす。
腕を持ち上げることもできないヒカルのために、アキラはその粥をひとくちひとくち、
ヒカルの口元に運んで食べさせてくれた。
食べてみれば、その薄く塩の味のついた粥は、体に染みるように美味しくて、
ヒカルはスズメのひな鳥よろしく、アキラが口元に運んでくれるそれを
次から次へとねだって食べていた。
ふとヒカルは、アキラの腕にはまだ血がこびりつき、昨夜の惨状を留めたままなのに
気がついた。
「おまえ、オレのことはもういいから、自分の手当てしろよ」
さっきまでは喋るのもおっくうだったのに、今は楽に声が出た。
やはりアキラの言う通り、物を食べたのがよかったんだろう。
「君がこれを全部食べ終わったらね」
そう言って、アキラはまた餌をひな鳥の口に運ぶ。ヒカルは遠慮なくぱくついた。
「すまなかった」
「え?」
「大きな口をたたいておいて、僕は何もできなかった。佐為殿に合わす顔がない。
 こうして君と顔を合わすことさえ恥ずかしい」
恥ずかしいというなら、夕べ、魔物に嬲られてあられもなく乱れる様をお前に
さらした自分はどうなるんだと思ったが、思い出したくもないので黙っていた。
「こんな筈じゃなかった……、いまさら言いわけにしか聞こえないかもしれないが、
 本当に強力な結界だったんだ。あれは」
それはわかる。アキラの陰陽術の腕は、あの妖怪退治の折りにヒカルも見せつけ
られたし、こういう時に手を抜く奴じゃないこともよく知っている。



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