失着点・龍界編 69
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「…緒方さんには計り知れないほどの迷惑をかけてしまった。
緒方さんだけじゃなくて…他の人にも…進藤にも…ボクのせいで…」
見る見るうちにアキラの顔から血の気がさらに失われていくのが分かった。
「お前のせいじゃねえよ!!」
ヒカルは汚れたシャツやジーパンを脱いで自分もベッドに上がり
アキラに毛布をかけてやる。
「…塔矢は何一つ悪くねえよ。」
ヒカルは青ざめて震えるアキラの唇に色を戻そうとしてキスをした。
温めるように唇で包み込むようにして時間をかけて、何度もくり返す。
やがてアキラもそれに応じるように唇を動かし、互いに舌を求め合った。
両腕をヒカルの首に回してアキラはヒカルに強く抱きついて来た。
アキラの体はひんやりしていて体温がひどく低いような気がした。
寒がるようにアキラの体の震えは止まらずかえってひどくなっていく。ここへ
来て初めて自分の身に起きた恐怖に怯えるように全身を激しく震わせ続ける。
「…恐かった…。」
「…塔矢…」
「恐かった…。…あの部屋から二度と出られなくて、もう進藤に会えなく
なるかと思ったら、…恐かった。…すごく恐かったんだ…!!」
アキラにしがみつかれた首元がアキラの涙で濡れて行くのが分かった。
寸でのところで沢淵の楔から逃れる事はできたとは言え、アキラが受けた
痛手は相当なものだ。男達の前であれ程気丈に振る舞って見せていたとは言え
心の底ではどんなに心細く精神の限界で悪夢のような出来事と戦っていた
事だろう。アキラもまだ自分と同じ年令の子供でしかないのだ。
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