第162局補完 7


(7)

けれどそのままヒカルが動きもしないので不安になって見上げると、ヒカルが優しげな笑みを
浮かべて自分を見つめていたので、見る間に頬に血が上ってしまった。
慌てて目を逸らして顔を背けようとしたのを、ヒカルの手に阻まれた。
「塔矢、」
逃げようとするアキラの身体をヒカルが更に引き寄せる。
悔しい。
悔しくて涙が滲みそうになる。
まるでこれじゃボクが待ってるみたいじゃないか。
ずるい。卑怯だ。なんてずるい男なんだ、キミは。
いっつもそうやってボクを翻弄して、待たせるだけ待たせて。

そうしてやっと触れてきたヒカルの唇を、震えそうになりながら味わった。
何度しても慣れることができない。
そのたびに眩暈がする。頭の芯が痺れたように感じる。胸が締め付けられるように痛み、鼓動
は高く、早くなる。
柔らかな唇の感触も、触れ合う肌の熱さも、「塔矢、」と呼ぶ、いつもとは違う、低く響く声も、いつ
までたっても慣れることができない。
けれどそれは居心地の悪いものではなく、むしろ逆に眩暈がするほどの陶酔感にで、だからそれ
に慣れることはできないのに、もっと欲しいと思ってしまう。
理由なんてわからない。
どうしてそれが欲しいのかなんて。
どうしてもっともっと触れ合っていたいと思うのかなんて。
もっと深く、もっと奥まで、彼に触れたいと、彼を感じたいと思ってしまうのかなんて。
「塔矢…」
わからない。自分の名を呼ぶこの声が、どうしてこんなに心地良いのかなんて。
理由なんてわからない。
どうして自分が今、泣いているのかなんて。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル