少年王アキラ 7
(7)
アキラ王は、自分の恋心をそのまま写し取ったような切ない楽の音に、
うっとりと聞き入った。
「レッド・・・今日ボクは必ず万馬券を当ててみせる。そして、キミに
紅白の碁石をプレゼントしよう・・・」
注:そんなものあるのかどうかは知りません
アキラ王の心はもうすでに彼方へと飛び立っていた。
瞼の裏には嬉しそうなレッドの笑顔が浮かんでいる。
だが、アキラ王の側で恭しく跪いたまま、ラジカセを操る座間がよけいなツッコミを
入れてしまった。
「下僕の分際で畏れ多いことを承知で申し上げますが・・・。碁石は普通は
黒と白では・・・」
その一言がアキラ王の逆鱗に触れた。座間が全てを言い終える前に、アキラ王は
持っていた競馬新聞で、座間のそのふっくらとした頬をしたたかに打った。
「黙れ!黒と白など・・・!縁起が悪いではないか!」
「お前は・・・!ボクの恋は先行きが暗いと言いたいのか!!ふざけるな!!!」
本日2回目の『ふざけるな!』であった。
アキラ王は怒りのあまりふるふると震え、眦が切れ上がっている。
座間は床に額をこすりつけ許しを請うたが、アキラ王の怒りは収まらなかった。
「もういい・・・!お前は今日は留守番だ!」
アキラ王は吐き捨てるように言った。座間はその小さな目に涙を浮かべて懇願した。
「もうよけいなことは申しません!お願いでございます・・・」
放置だけは・・・!
座間の哀切きわまりない泣き声が、アキラ王のプライベートルームに響いた。
と、その時、それを遮るように、入り口から嗄れた声が聞こえた。
「ふぉふぉふぉ・・・若いのう・・・アキラ王は・・・」
アキラ王と座間は声の主を見た。小柄な老人が立っていた。
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