白と黒の宴2 7
(7)
両手を強く握りしめ立ちすくむアキラを眺めながら社は嬉しそうにニヤニヤしている。
「…進藤って可愛エ奴やなあ。」
社のその呟きにアキラはぎくりとする。
「あいつなんか、仔犬みたいや。さっきもう少しであいつにキスしたくなりそうやった。」
アキラには社が何を言いたいのかわからなかった。
「さてと、じゃあオレ達も行こか。」
「えっ…」
「嫌やったらええで。無理にとは言わん。あんたと同じ位、あの進藤に今は興味がある。」
そう言って社はスタスタとヒカルが向かった先へ行こうとする。
「社…!」
思わずアキラは社を呼び止めていた。社が余裕の笑みを浮かべてゆっくり振り返るのを
アキラは唇を噛み締めて睨んだ。社が笑いながら近付いて来た。
「そんなコワイ顔せんでくれ。…ほんの少し、オレにつき合うて欲しいだけや。」
アキラは返事をしなかった。
それでも、社が歩く後ろについて歩いた。行くしかなかった。
社は荷物をロッカーから出して棋院会館を出ると大通りでタクシーを止め、渋るアキラの
腕を掴んで押し込むようにして乗り込んだ。
社は慣れた様子で渋谷のあるビルの名で行き先を運転手に告げた。
夕闇が始まった赤みを帯びた空の下の街中へタクシーは走り出して行った。
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