通過儀礼 覚醒 7


(7)
「ただいま」
アキラは泣いたあとがわからないように庭で顔を洗った後、家へ入った。
「あら、随分早かったわね」
夕飯のいい匂いをさせながら明子が出迎える。
「まだお夕飯には早いから、お父さんに一局お願いしたら」
「…ううん。お風呂に入る」
アキラはそう言うと風呂場へ行こうとした。
「アキラ、お帰りなさい」
廊下の奥からヌッと出てきた行洋にアキラは驚く。
「わあっ! お…おとうさん。ただいま」
行洋はゆっくりとアキラに近づく。
「良い子だ。ちゃんとお父さんとの約束を守ったね」
アキラの頭をなでながら行洋は笑った。
「それじゃあ、お父さんと一緒にお風呂に入ろうか」
いつものことなのでアキラは素直に頷こうとした。だが股間に湿布が貼ってあることを思
い出し、アキラは焦った。
「おとうさん、ボクもう年長さんだよ。一人でお風呂入るよ」
アキラはそう言うと風呂場へ逃げようとした。だが一緒に入る気でいた行洋は息子の突然
の拒否に納得がいかず、アキラを抱き上げた。
「まだ年長さんだ。それにアキラは今まで一人でお風呂に入ったことないだろう。何かあ
ったら大変だ。…ん? 湿布のようなにおいがするな」
抱き上げたことでアキラの股間から香る湿布の匂いを間近に感じた行洋は、どこからそれ
が匂うのかアキラの体をかいだ。
「やめて! おとうさんのエッチ!」
アキラはそう言って行洋の頭をポカスカ叩くと、腕から飛び降りて風呂場に駆け込んだ。
「…お、お父さんの…エッ…チ………」
その言葉にショックを受けた行洋はその場に凍りついた。
「あらあら。とうとう嫌われてしまいましたね」
明子は嫌味っぽくクスッと笑うと、台所へ戻っていった。



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