四十八手夜話 7


(7)
アキラはあきらかに不服そうな顔をして、ヒカルの目の前に正座した。
ヒカルもそれに習う。男が二人素っ裸で正座して向かい合っている光景というのは
どうなんだ、と思いながらヒカルは口を開いた。
「オレ達、一応つきあってるんだよなぁ」
「もちろんだ。世間一般でいう恋人同士という関係だと思っている」
少し照れたようにアキラが下を向く。こういうところは可愛いんだけど。
「じゃあさぁ、もっとそれなりに、こう恋人同士っぽい雰囲気があってもいい
 んじゃねえ?」
自分達は男同士だ。ヒカルだって、世間一般の男と女の甘い雰囲気などアキラに
求めているわけではない。はっきりいって男同士でそれは寒い――でも、限度と
いうものも確かにあるのだ。
「恋人同士……」
「そう、もっとさー、気分を盛り上げようとかそういう努力」
「僕は君さえいれば、いつでも気分は盛り上がってるも同然なんだが」
「だから、そういう直接的な欲望みたいなのじゃなくて、なんてーの、よく
 テレビドラマの恋愛ものみたいに、小道具利かせたりさ、気の利いたセリフの
 ひとつも……」
「僕は恋愛ドラマは見ないんだ」
「うぐっ」
今度、ビデオに撮りためて送り付けてやろうか。そういえば、母親が録画してた
火曜サスペンス劇場があったな。あれだと、結構色っぽい男女のデートシーンが
あったから参考に……、とそこまで考えて、ヒカルはやめた。火曜サスペンスは
恋愛でも不倫が多いのだ。アキラが真に受けて女と浮気でもしたら、自分はひどく
不愉快だ。
「とにかく、気持ちの問題って言うの? そういう話だよ」
「僕は君が好きだ。何度だって言える。それじゃ足りないのか? 君も僕を好きだと
 そう言ってくれた。違うか?」
アキラの目は真剣だ。しかし、ヒカルの中に起こった反抗心が「へー、そんな事
言ったっけ? いつ? 何月何日何時何分何秒?」という言葉を紡ぎだしそうになり、
さすがにあまりに幼稚なのでこらえる。そんなことを口にすれば事態の泥沼化は
目に見えている。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル