初摘み 7
(7)
こういうときって、どうすればいいんだろう。ヒカルは、頭から湯をかぶって考えた。
ヒカルの知っていることと言えば、保健体育の授業で得た乏しい知識と友人達の話の中で
聞きかじったモノだけだ。それすら、完全には理解できていない。
スポンジにボディーソープを含ませて、ゴシゴシと腕や首筋を擦る。ふんわりといい香りが
鼻腔をくすぐる。
「あ…塔矢とおんなじ匂いだ……」
アキラに抱きしめられているような気がして、うっとりした。
――――――オレ……塔矢とするんだ……
カッと顔が熱くなる。顔だけではない。全身が熱い。
熱を冷まそうと、何度も、水をかぶる。小さなくしゃみが出た。途端に脱衣所の方から、
声がかかった。
「どうしたんだ?」
「え…あ…なんでもない…!なんでもないよ…」
「…ならいいけど…着替えここにおいておくからね。」
ドアの閉まる音がして、足音が遠ざかる。ヒカルは、手早く髪を洗うと、湯船の中に
飛び込んだ。
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