平安幻想秘聞録・第二章 7


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 それにしても、退屈だ。すぐというのも、どこかのんびりとした平安
時代とせかせかした現代では違うのかも知れない。少なくとも半時が過
ぎても佐為たちは戻って来る気配さえない。
「せめて碁盤と碁石があればなぁ、何時間だって時間を潰せるのに」
 頭の中で棋譜を浮かべるのもいいが、やはり碁石を持つ方がいい。
 そのとき、すっと佐為たちが出て行ったのとは違う襖が開き、ヒカル
は思わずびくりと身体を竦ませた。
「あぁ、すまぬな。人がいるとは思わなかった」
 声の主はまだ、年の若い男だった。声の調子にどこか雅やかな響きが
ある。きっと身分の高い貴族だ。そう思って、ヒカルは佐為に言い含め
られていた通りに、ぺたんと頭を下げた。
「そう畏まらなくても良い。闖入者は私の方だ」
「いえ、身分の高い方に失礼があっては、オレ、いえ、私が主人に叱ら
れます」
 若干棒読みの答えだったが、相手はヒカルが緊張してるのだと取って
くれたらしい。
「そうか。そなたはどなたかのお供で参ったのか?」
「あっ、はい」
「主は・・・いや、訊くのは野暮というものだな。今宵は宴なのだしな。
私も少し飲み過ぎたようだ。悪いがここで酔い醒まさせてもらうぞ」
 うわぁ、早く出て行ってくれないかなーと思いながらも、ヒカルは下
げた頭で更に下にして頷くしかない。
「そなたのそのままでは辛かろう。私はそちらを向かぬようにするゆえ、
楽にしていてよいぞ」
「あっ、でも、いえ、ですが・・・」
「かまわぬ、かまわぬ」
 やっぱり酔っているのか、男はどこか陽気だ。そっと視線だけを上げ、
相手がこちらを見てないのを確認して、ヒカルは身体を起こした。



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