誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 7
(7)
その頃、ヒカルは夢の中にいた。
目の前には大河が流れている。川のほとりの花畑に腰を下ろしながら、ヒカルは向こう岸を眺めていた。
ペットボトルを持った和谷と消防士姿の伊角がおいかけっこをしているのが見える。
「あの二人、仲が良いんだなあ…ハハハ」
二人の姿が消えた後、今度は対岸に佐為が現れた。微笑みながら手を振っている。
「佐為…?佐為か、本当の、本物の…佐為なのか?」
慌てて立ち上がり、川岸に駆け寄る。ジーンズが水に濡れるのも構わずに川に入った。
「佐為、佐為ー!!何やってんだよ、オレ、お前がいなくて…」
ヒカルが川に足を踏み入れたのを見て、佐為は顔色を変えて必死に何かを訴えかける。
だがヒカルには佐為の声が聞こえず、もどかしさを感じながら、ヒカルはどんどん川の中へと進んでいく。
「今日はオレの誕生日だから、神様が佐為に会わせてくれたのかな…」
だとしたら、これが佐為を取り戻す最後のチャンスかもしれない、そう思えた。
「佐為、今からそっちに行くよ!待ってて、佐為ー!」
「アキラ君!進藤の様子が変だぞ!」
真っ青な顔で泡を噴き始めるヒカル。全身が痙攣し始めている。
「あーアキラぁ、もしかしてエーテル嗅がせすぎたんだろおー?」
「えっ!?…進藤、どうしたんだ進藤!脈もどんどん弱くなってる…これは」
「生死の境をさ迷ってるぞ」
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