禁断の章 7
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身体を洗うのもそこそこにオレ達は湯船に身を沈めた。
進藤は上機嫌だった。
オレは進藤のその様子に安堵し本来の目的である話を切りだした。
「え・・・オレそんなに変だった?」
進藤は男の割に大きい目を見開いて和谷を凝視した。
「ああ、かなり・・みんな心配してたぜ。また落ち込んでそのうち
碁が打てなくなるんじゃないかって」
進藤は苦笑いで「オレ、前科者だしな」といった。
「だから悩みがあるんだったら話してほしいんだ」
いつになく真剣な目で進藤を見た。
進藤はびっくりしてたが、かすかにほほえんでありがとうといった。
和谷は絶句した。
かわいかった。一瞬抱きしめたい衝動にかられた。
いけないいけない和谷はなんとか煩悩をふりはらった。
「心配してもらうほどでもないんだ」ははっと進藤は困ったように
言った。「オレには言えない?」オレは引き下がらない。
こんどこそ力になるんだ。
和谷の気迫に押されたのかヒカルは一瞬口をつぐんだが、和谷の方に
向き直り笑いながら「実は期末がひどくて補習受けなきゃいけないんだ」
と困ったように言った。
「へ?」和谷はぽか〜んとする。絶対深刻な話だと決めつけていたが
そんなことだったとは。確かに進藤は成績悪いが普段気にしない奴なので
だいたいの学生が抱える成績が悪くて悩むとは到底考えつかなかった。
進藤はオレが笑ったのを見て”笑い事じゃない卒業させてやらないって
言われたんだぞ。”とふくれっ面をした。
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