望月 7
(7)
そぞろ歩いて庭の東端まできた。そこで立ち止まると、二人はきょう何度目か、目を
見合わせた。
――きょうはヤメよう。
――きょう、ダメになっちゃったな。
だが、それまでとは違って、ふたりの視線は絡みあったままずっと離れなかった。
引き寄せられるように二人の距離が縮まった。
そのまま二人はくちづけを交わした。
ケーキの甘い味がした。
「おめでとう、進藤。」
薄い色の前髪と頬に月の光があたって、大きな瞳はキラキラと輝いていた。
ほほえむヒカルをもう一度その腕に抱きしめると、再びくちびるを重ねた。アキラの頬を
ススキが撫でて滑り落ちていった。
――このままずっと抱きあっていたい。
心が残った。
思いきるようにアキラは腕を開いた。ヒカルのすべてがわかったわけではないけれど、ヒカルは
自分のものだ。それだけは確かだ。今夜は共に過ごせなくなったが、早くまた会える時間を作ろう。
きょうはきょうで別の楽しみを味わうだけだ。
「打とうか。」
穏やかな声でアキラはいった。
(おわり)
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