ピングー 7
(7)
体の力が抜ける。
ベッドにぐったりと沈んだその肢体から、緒方はさらに下着や靴下、着ているもの
すべてをはぎ取ってしまう。
その緒方の様子を、されるがままになりながら、ヒカルはぼんやりと見ていた。突然
放り込まれたこの状況に、心が付いて来ていないのだ。
――いったい、自分は緒方のマンションに来て、こんなベッドの上で何をしているん
だろう。一時間前までは、酔っぱらった緒方の熱帯魚談義を聞き流しながら、寿司屋の
カウンターにいたのに。
緒方はそのヒカルを残して立ち上がると、バスの方に消えた。水が流れる音がする。
ヒカルの精液で汚れた手を洗っているのだろう。
水音が止まってすぐに、緒方はベッドサイドに戻ってきた。
手には何か薬のチューブのようなものを持っている。
緒方の手が、ヒカルの頬を軽く叩いた。
「寝るなよ、まだ終わりじゃないんだぜ」
ヒカルは、我知らず、不安げな表情で男を見上げていた。
実際、こんな馬鹿馬鹿しい悪ふざけは、これで終わりだと思っていたのだ。
「本当は女用なんだがな」
ヒカルの瞳の無言の訴えを無視して、男がチューブから無職透明のジェルを搾り出す。
ベッドに腰を落とし、寝転がったままのヒカルのを身を乗り出すようにして覗き込む。
「自分でやってみるか?」
男の手が、まるで迷子を導くかのように、ヒカルの手首を取り、そのまだ細い指先に
ジェルを乗せると、まだ少女のように柔らかいその太腿の奥へと誘導した。
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