落日 7
(7)
湯に浸した布で彼の身体についた汚れを丁寧にふき取ってやり、衣を着せ掛けてやった。
そうしてやっとほっと一息ついて、傍らで眠る少年の顔を覗きこんだ。
先ほどよりは安らかな顔で眠りについている彼は、やはりしかし、以前見知った、少年検非違使とは別の
人間のように思えた。
なぜ、と自らに問いかけながら彼の柔らかな、特徴のある前髪を梳く。
彼をそういった対象として見たことは無かったはずだ。
それなのになぜ、こんな事をしてしまったのか。
いや。
彼の儚げな笑みを見てズキリと痛んだ胸の痛みを思い出す。
あの痛みはなんだったのか。
窶れてこけた頬が痛々しい。長い睫毛の下に涙が滲んでいるのに気付いて、胸が締め付けられるように
痛んだ。多分、いやきっと確実に、自分を「彼」と混同しているのだろう。知らなかった。気付かなかった。
彼らがそういう関係であった事に。そうであればこそ、彼のこの憔悴も納得が行くというものだ。
可哀想に。そう思った。
だからこれは同情だ。逝ってしまった人を思って泣く子供が可哀想で、彼を慰めてやっただけだ。
いや、違う。
同情などではない、断じて。
ではこの感情は何だ?
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