しじま 7
(7)
進藤がお風呂に入っているあいだ、ボクは自分の部屋に二組のふとんを敷いた。
枕元に新しいティッシュの箱を置く。
……何だかヤル気満々みたいに見える。
ボクは未だに、ちっともそんな気になどなっていないのに。
マッサージ用のオイルびんを手に取ってみる。ふたを開けると花の香りがただよった。
身体を優しくつつんでくれるような、柔らかな香りだ。
そのとき、手がふるえているのに気付いた。
ボクはどうしてこんなにも緊張しているんだろう。
初めてじゃないのに。
いや、ちゃんと付き合ってからは初めてだ――――
「塔矢」
「わあっ!!」
「おわ!?」
振り返ると、ボクの貸した寝巻きを着た進藤が立っていた。
「なにおどろいてんだよ。びっくりするだろっ」
「あ、ああ。すまなかった」
「まあ、いきなり呼んだオレも悪かったかな」
進藤はボクのそばに膝をついた。その身体が近付くと、熱気を感じた。
耳元にかかる進藤の吐息にボクの心拍数があがる。
「とう……」
「ボクも入ってくる」
ああ、また逃げるような態度をとってしまった。
だけどどう接したらいいか、わからないんだ。
身体を洗いながら、ボクは自分に困惑する。
スポンジを持つ手が下半身にいったとき、ふとボクは考えた。
一回、抜いておいたほうがいいかもしれない。
だってこれからはボク一人で進藤を満足させなくてはいけないんだから。
和谷はもういないのだから。
――――進藤は、和谷とちゃんと話をつけたのだろうか。
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